広島新庄のエースは本格派右腕。
「左でなければ」のジンクスを破るか
2年前、2人の1年生右腕に目がくぎ付けになった。
ひとりが、今や"高校BIG4"の一角として連日メディアに取り上げられている西純矢(創志学園/岡山)。当時は現在の代名詞となっている縦のスライダーではなく、フォークを武器に空振りを奪っていたが、強い踏み込みで投じるストレートと縦変化のコンビネーションは出色の存在だった。
1年春からベンチ入りするなど、経験豊富な広島新庄のエース・桑田孝志郎 魅了されたもうひとりの逸材が、桑田孝志郎(くわた・こうしろう/広島新庄)だ。初めてじっくりと登板を見たのは、秋季大会後に開催された1年生大会。ひと目で股関節の柔軟性が伝わってくる豪快な足上げから、跳ねるようなステップで重心を前に移す投球フォーム。体を縦回転することで生まれる、角度のあるリリースから投じられるストレートは、初回の投球練習の時点で142キロを計測した。「球速が出やすい」と評判の三次きんさいスタジアムのスピードガンではあったが、球速表示以上の勢いに胸が躍った。
岡山と広島に現れた、2人の本格派右腕。「2年後の中国地方をリードするのは彼らだな」と思い、ある高校野球雑誌にもそういった内容を書かせてもらった。
その後の歩みを見ると、西の"ブレイク"は周知のとおり。2年生エースとして出場した昨夏の甲子園初戦で16奪三振の快投を披露し、たちまち全国区の存在となった。
一方の桑田は、昨春の広島大会、中国大会を制したものの、夏は決勝で広陵に惜敗。背番号10ながら主戦格として決勝の先発を任され、延長10回を粘り強く投げたが、甲子園出場はならなかった。
衝撃的な全国デビューと県大会決勝での涙。勝負の世界で「たら・れば」が御法度なのは重々承知しているが、「昨夏桑田が甲子園に出場していれば、もしかしたら西と同じくらい注目されていたのでは......」と、今でも考えてしまうのだ。
この夏、甲子園へのラストチャンスに挑む桑田は、山口県宇部市の出身。故郷を離れ、広島新庄に進んだのは、幼少期から知る先輩の存在が大きかったという。
「家も近所で昔からよく知っていた古川智也(現・慶応義塾大)さんの存在が大きかったです。自分が中学3年だった夏(2016年)に、古川さんが1年生でベンチ入りをして甲子園に出ていたので、『自分もここで甲子園に行きたい』と考えるようになりました」
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