未来の名捕手候補がセンバツに集結。世代No.1の称号は誰の手に? (2ページ目)
かといって、力任せのスローイングをするわけではない。東妻のイニング間の二塁送球を見ていると、左足を強く前に踏み込んで、しっかりと体重移動で勢いをつけていることに気がつく。東妻に聞くと、「下半身でしっかりと運ぶことで、上体がリラックスしながらでもストライクの送球がいくようになるので」とこだわりを口にした。
東妻のフットワークがいいのは、中学までショートを守っていたことと無縁ではないだろう。智弁和歌山に入学する際、前監督の高嶋仁氏と当時コーチだった中谷仁監督から強肩を見込まれ「キャッチャーをやってみないか?」と提案を受け、捕手に転向したのだ。
高校入学後は、中谷監督から英才教育を受けた。中谷監督は捕手としてドラフト1位で阪神に入団し、楽天、巨人と渡り歩いて15年間もプレーした。そんな元プロ捕手からとくに叩き込まれたのは、技術以前のことだったという。
「中谷監督からは『ピッチャーを立てるのがお前の仕事だ』と言われています。主役はピッチャーだと。最初は自分の結果ばかりが気になって、ピッチャーにも厳しく言ってしまっていたんですけど、それではかえって(萎縮して)投げてくれないことに気づきました。周りが見えるようになって、ピッチャーのよさを引き出せるようになってきたと思います」
東妻は自ら積極的に中谷監督に助言を求めにいくという。その貪欲な姿勢があるからこそ、東妻は捕手としても打者としても着実にステップアップしている。
師の中谷監督は東妻の成長を認めつつ、辛口のエールを贈る。
「まだまだ、もっと先を見てやっていかないと。この春の1試合、2試合でどうなるというものではないので。求めるものはもっと高いところにあります」
優勝候補に挙げられながら、武運つたなく習志野に敗れた星稜。その扇の要を担った山瀬は、今春に株を大きく上げた。
試合前、星稜のキャッチボールを見ているだけで、山瀬がどこにいるかはすぐにわかる。勢いよく助走をつけた遠投は「キュイーン!」という効果音が聞こえてきそうなほど、低い軌道で伸びていく。
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