2019.03.29

「山梨のデスパイネ」が開花。
筒香を育てた名参謀の助言とダイエット効果

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「デスパイネ」と呼ばれていることは、本人にとって不本意なのか。念のため確認すると、野村健太(山梨学院)は泰然と「イヤではないです」と答え、こう続けた。

「かといって、よくもないです。普通です」

 野村を囲む報道陣の間で笑いが起きた。札幌第一(北海道)との大事な初戦を控えた試合前取材。野村がまとう鷹揚な雰囲気は、またたく間にその場を支配した。

初戦の札幌第一戦で2本塁打を放った「山梨のデスパイネ」こと野村健太 最初にその名を呼んだのは、山梨学院の吉田洸二監督だ。入学当時の野村の体重は99キロ。独特の大物感を醸し出す野村に対し、吉田監督は親しみを込めて「デスパイネ」と呼んだのだった。

 デスパイネとは、ソフトバンクの大砲、アルフレド・デスパイネのことを指す。ひとたびバットの芯で捉えれば、どこまでも打球を飛ばすキューバの怪人。吉田監督には、そんなデスパイネと野村が重なって見えたのだ。

 昨夏の甲子園では、レフトスタンド中段に飛び込む特大弾を放ち度肝を抜いた。それ以来、野村の通り名は「山梨のデスパイネ」になっている。

 入学当初の野村は動きが鈍重で、その怪力をプレーに生かせていなかった。そこで、食事制限による減量に取り組み、体重を88キロまで減らした。甲子園球児の多くは大会期間中にホテル暮らしで体重を増やすものだが、野村は今でも「腹六分くらいまでしか食べられません」と語る。大好物の魚が朝食に出ることがささやかな喜びだという。

 野村は今春センバツ初戦・札幌第一戦でも、その怪力を見せつけた。打った瞬間にそれとわかるホームランを、左中間スタンドとバックスクリーン左にそれぞれ放り込んだ。野村の6打数3安打5打点の大暴れもあり、山梨学院は大会最多タイの24安打をマークし、24対5で圧勝した。

 試合終了後、甲子園球場内に流れる山梨学院の校歌をバックネット裏スタンドで立ち上がって聞き入る人物がいた。それは臨時コーチを務める小倉清一郎コーチである。横浜高(神奈川)時代は名将・渡辺元智さん(前監督)を支えた名参謀。松坂大輔(中日)、筒香嘉智(DeNA)ら数々の教え子に高い技術を仕込み、驚異的な分析力で対戦相手を丸裸にしてきた。現在はさまざまな高校の臨時コーチとして、全国を渡り歩いている。