バットをPCに持ち替えた「由伸2世」は1億円プレーヤーを目指す (2ページ目)

  • 清水岳志●文・写真 text&photo by Shimizu Takeshi

 そして谷田の指名を難しくしたのが外野守備だった。もともとうまい方ではなかったが、驚いたのは捕球イップスになっていたことだ。

「4年春にゴロを捕り損ね、サヨナラエラーをしてしまった。それが原因でゴロイップスになってしまって。捕球する時に全身が固まるようになって、ごまかしながらやっていたんですが......」

 その年の夏、大学日本代表と高校日本代表との強化試合が甲子園で行なわれた。当時、仙台育英の強打者だった平沢大河(現・ロッテ)の打球を弾いてスリーベースにしてしまう。

「しかもテレビで中継されていて、致命的な印象になったと思います」

 イップスのことは誰にも話さなかった。

 ドラフト当日は、寮で野球部の仲間たちとテレビを見ていた。同期の山本泰寛(現・巨人)、横尾俊建(現・日本ハム)が指名されるなか、谷田の名前は呼ばれなかった。

「終わってから『飲みに行こう』と同期が誘ってくれました。(寮のある)日吉で12時過ぎまで10人ほどで飲んでいたのですが、いろいろ話しているうちに吹っ切れました。社会人からプロを目指そうと切り替えられました」

 谷田が仲間と飲んでいる最中に、JXENEOSの監督から慶応大の大久保秀昭監督に勧誘の電話があったという。

「緻密というか、勝つために必要なことを徹底する。エネオスなら自分にないものが手に入るんじゃないかと思って決めました」

 社会人野球の2年間、できることはやった。基本的な練習を繰り返し、イップスも克服した。しかし2年目のシーズンでレギュラーに定着できず、都市対抗出場も逃し、納得できるものは何ひとつ残せなかった。

「確実性がなく、球数を投げさせるとか、打てなくても仕事のできる選手ではありませんでした。一発勝負では使いづらい。いい選手が入ってくるので、替えはいくらでもいるんです」

 すでに隠れた逸材ではない。調査書が届くなど期待している半面、厳しいなと認識していたという。結局、ここでもプロ入りを逃すことになった。

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