2019年ドラフト主役候補・奥川恭伸。
田中将大の成績を上回る凄さ
この冬、全国各地のさまざまな選手・指導者に会うたびにこう聞かれた。「奥川は見ましたか?」と。
星稜(石川)の2年生エース・奥川恭伸(おくがわ・やすのぶ)が2018年秋の明治神宮大会で見せたパフォーマンスは、関係者に大きな衝撃を与えた。
昨年夏の甲子園でも活躍した星稜のエース・奥川恭伸 11月10日の広陵(広島)との初戦、バックネット裏に詰めかけたスカウト陣の前で、奥川は7回を投げて被安打3、奪三振11の無四球無失点の快投を見せつけた。試合は星稜打線が爆発し、9対0と点差が離れたため7回コールドで終わった。
広陵は中国大会準決勝で創志学園(岡山)と対戦し、夏の甲子園で話題をさらった2年生右腕・西純矢から7点を奪い、8回コールド勝ちした中国チャンピオンである。西に対しては7回まで7安打1得点に抑えられていたものの、8回裏に3安打に3失策が絡まり一挙6得点のビッグイニングで試合を決めている。
1年生ながら西と奥川からそれぞれ2安打を放った広陵の好打者・宗山塁は、西と奥川を比較してこう語っている。
「西さんの真っすぐは圧力があって、高めに威力を感じました。高めに力のある真っすぐが来て、最後に変化球を決め球に使うのですが、コントロールがいいわけではなかったんです。でも奥川さんはコントロールがよくて、無駄球がない。ストレートも変化球もキレがものすごくて、どちらでもストライクが取れるので絞り切れません。追い込んでから投げられる変化球がスライダーとチェンジアップみたいな落ちる球があって、当てられずに打ち崩せませんでした」
そして宗山は実感をこめて、「奥川さんは今まで対戦したなかで一番のピッチャーでした」とつぶやいた。
広陵との試合後、奥川は涼しい顔で会見場に現れた。疲労の色はどこにも見えなかったが、それもそのはず。何しろ、この試合で奥川は78球しか投げていなかったのだ。奥川は鈴なりの報道陣を前に、こう言ってのけている。
「いつも通り、7~8割の力でコース目がけて投げることができました」
手を抜いたわけではない。自分のボールをきっちりとコースに投げ分けるために、あえてセーブして投げたということだ。
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