昨年以上の期待。2019年ドラフト
戦線をリードする9人の逸材たち (2ページ目)
「変化球はベースの上で消える......」
昨年秋の神宮大会で、奥川の快投に封じられた打者たちから聞いた言葉だ。高校生でこれだけの完成度がある投手はめったにいるものではない。高校生でありながら"即戦力"の可能性を秘めている。
昨年のドラフトで、3位までに指名された36人のなかで"左腕"はたったの2人しかいなかったが、今年はそれよりも厳しい状況だ。だからこそ、及川への注目度は日増しに高くなっている。
高校2年の秋までに150キロに到達した左腕と言えば、花巻東時代の菊池雄星(西武→シアトル・マリナーズ)以来だろうか。
しなやかな腕の振り、右打者の懐(ふところ)をえぐるクロスファイアーの角度と強さは一級品。それにスライダーも、現時点でプロ級のキレを持っている。あとは調子の波をいかに穏やかにできるかだろう。
この3人に続くのが、189センチの大型右腕・廣澤優(日大三/右投右打)。チームメイトには井上広輝という快速右腕がいて、彼の方が先に注目を浴びていた。だが、井上がケガで投げられない間にスッと現れたのが廣澤だった。
腕の長さがハンパなく、そのため"遠心力"がつく。普通の高校生なら遠心力に腕力、握力が負けてしまい、ボールが高めへと暴れてしまうのだが、廣澤にはそれがない。右打者の外角低めに決まった時のストレートの威力と角度は、奥川に匹敵か、それ以上と見る。
もちろん、奥川ほどの完成度はないが、伸びしろというか、未知の魅力を廣澤には感じる。また、日大三には廣澤と井上以外にも主戦級の投手がいて、肩の消耗が少ないのも大きなプラス材料だ。
高校生の投手でもうひとり、注目を集めているのが西純矢(創志学園/右投右打)だ。昨夏の甲子園初戦でセンバツ8強の創成館相手に140キロ代後半のストレートと高速スライダーで、16三振を奪って見せた快投は記憶に新しい。
その西だが、昨年の秋に体のシルエットが変わっていて驚いた。遠目でもわかる隆々としたごつい体格。ボールのキレに重さが加わったのは間違いない。パワーなら、高校生投手のなかではナンバーワンだろう。
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