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花咲徳栄・野村佑希はマン振りせず
58本塁打。仰天練習で体力強化した (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 あとは、実戦経験を積むだけ。練習試合では140キロを超えるプロ注目の好投手から公立高校の120キロ出ない投手まで、とにかく打席数を増やした。

「打てない時も監督さんが使ってくれて、試合のなかでいろんな経験ができました。そしたら、突然、タイミングの取り方がわかって、打てるようになったんです」

 2年春には青藍泰斗の石川翔(現・中日)を打ち込んで自信をつけた。それが、日本一になった夏の甲子園での2本塁打にもつながる。次の課題は逆方向へ長打を打つこと。2年の冬にはバスターで逆方向への打撃をくり返して打者としての幅を広げた。

 高校に入り、試合に出始めたときは外野。2年夏はファースト、3年春はサード。3年夏に初めて4番・エースとして臨んだが、猛暑での二刀流に備えて、仰天する練習に取り組んだ。

 練習試合では1試合目に投手として登板。2試合目は指名打者として出場した。指名打者では打席が回ってこない時間が長い。その時間を無駄にしないため、味方の守備中はもちろん、攻撃中でも打が遠いイニングはずっと走り込みをしていたのだ。

 じつは、岩井監督は2年時から野村を投手で起用することを考えていた。綱脇慧(東北福祉大)、清水達也(現・中日)の二枚看板ではなく、野村との三本柱。だが、野村に投手をやらせると、疲労からまったく打てなくなってしまい断念した。二刀流をするには体力強化は不可欠。その教訓があったから、こんな練習を思いついたのだ。苦笑いしながら野村がふりかえる。

「体力がきつくなってきたなかで、常に疲れた状態で集中できるか。自分が走っている間に相手のピッチャーが代わっていて、打席に入るときに『ピッチャー、代わってる』と気づいたこともあって、対応力もついたと思います」

 走って息を切らしながら、ほとんど観察する時間もなく初対戦の投手と対峙する。この経験もまた、打者・野村の幅を広げることにつながった。

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