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2ランスクイズでサヨナラ負け。
近江が悔やむ心のスキに予兆があった (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 ゴロを捕球した見市は一塁へ送球する。だが、見市の後ろには二塁走者の菊地彪吾(ひゅうご)が来ていた。

「2ランスクイズのサインはありません。この場合、コーチャーは見ません。自分の判断です。自分は足が速い(50メートル6秒0)ので、コーチから狙っていけと言われている。サードが捕ったときに自分がコーチャーボックスの前ぐらいならセーフになります」(菊地)

 見市からの送球を受けたファーストの北村恵吾が懸命にバックホームするが、間一髪セーフ。無死満塁からのサヨナラ2ランスクイズが完成した。

「正直、二塁ランナーのリードの大きさやリードは把握できていませんでした。もっと二塁ランナーを気にしておけばよかった」(見市)

 この場面で近江の内野陣は前進守備。セカンド、ショートともに前に出ているため、二塁走者はかなり大きくリードを取ることができる。事実、菊地は「リードを大きめに、シャッフルも大きめに取っていました」。事前に準備と確認ができていれば、1点は失っても2点目は阻止できた。

「1点はしょうがない。アウトを1個増やそうという考えで一塁に投げたんですけど......。偽投して二塁ランナーを狙えばよかった。ただ、あのときはあれが精一杯のプレーでした」

 見市はそう言って悔やんだが、近江は2ランスクイズの練習を攻撃でも守備でもしたことがないのだから仕方がない。初体験のことをイメージするのは難しい。

 それよりも、悔やまれるのは事前に状況を把握し、準備と確認ができなかったことだ。"スクイズ=同点"という意識しかなく、二塁走者のことが頭から抜けていた。それがあれば、三塁手の一塁への偽投も、送球を受ける一塁手がベースから離れて捕球し、本塁送球を優先させるプレーも選択肢の1つとしてイメージできたはずだ。

 最善の準備ができない心のスキ。実は、前日から予兆があった。

 3回戦の常葉大菊川戦。9対4と快勝したが、この試合で全力疾走しない選手が複数いたのだ。そのうちの1人は、フライアウト、ゴロアウトの両方で一塁ベースまで到達することもなかった。そんな姿勢が金足農戦でも出た。

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