2018.08.13

済美×星稜、タイブレーク決着の舞台裏。
両校の明暗を分けた一瞬の間

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 野球には、流れがある。

 絶体絶命、最大のピンチを脱して「さあ、攻撃だ」というときにインターバルが生まれてしまった。13回表、星稜の攻撃前のことだ。夏の甲子園では、今大会からタイブレーク制度が採用されている。この試合は2時間半を超える長時間の試合になったこともあり、12回が終わった時点で普段は5回終了時のみに行われるグラウンド整備が入り、選手たちに給水タイムが設けられた。

矢野功一郎の史上初となる逆転サヨナラ満塁本塁打で星稜を下した済美 星稜にとっては、この”間”が余計だった。直前の12回裏、星稜は満塁のサヨナラのピンチを逃れていた。それも、一死満塁ではカウント3-0、二死満塁では3-1と押し出しの危機を迎えながら、いずれも見逃しの三振を奪っての無失点。甲子園の盛り上がりも最高潮に達していた。球場全体が異様な雰囲気のまま攻撃を迎えれば、ヒット1本による歓声もボリュームが上がる。星稜に有利に働くはずだった。

 ところが、”間”が入ったことにより、球場全体も小休止。連続三振で持ってきた流れはなくなってしまった。一方、済美にとってはこの”間”はプラスに働いた。嫌なムードのまま守備につくことがなくなっただけではない。選手同士で声をかけ合う時間が生まれた。一死満塁から代打で見逃し三振に倒れた背番号16の徳永幹太は言う。

「整備が入って楽になりました。(カウント3-2から見送ったときは)審判にストライクと言われたかどうかもわからなかった。どんな状況も考えられなかった。あの間があって、3年生に『気にするな』と言われて楽になりました」

 愛媛県大会で出場ゼロの2年生・徳永は、昨秋以来の公式戦出場。三振直後の精神状態で守備についていれば、無死一、二塁のピンチから始まるタイブレークで、いきなり打球が飛んできた場合、ミスをする可能性は高くなるだろう。

「整備があったので『切り替えていくぞ』という感じになった。あの間はデカいと思います」(背番号9・近藤海楓)