横浜の最速152キロ左腕・及川。あえて2つの球種で勝負する理由 (2ページ目)
だが、「あの怪腕を打ってやったぞ......」という感慨にふける間もなく、私は及川の真の恐ろしさを知ることになる。
2打席目以降は、文字通り手も足も出なかった。明らかに1打席目よりもエンジンのかかった腕の振りで、強烈なスピンの効いた快速球が「シュルシュル」と音を立てて伸びてくる。とくに外角低めのストレートは、左打者の私には遠く見えて反応すらできなかった。
振り遅れないようストレートのタイミングで待っていると、あざ笑うかのように縦に割れるスローカーブでカウントを取られ、縦・横・斜めに変化する3種類のスライダーは追いかけても当たる気配がしなかった。結局、その後の3打席はすべて三振に斬ってとられた。後に残ったのは、敗北感だけだった。
対戦後に聞くと、やはり1打席目は私を侮っていたようだ。
「打たれてから気持ちを入れ直して、そこからは大会モードで投げることができました」
私は近い将来、よっぽどのアクシデントが起こらない限り、この左腕が高校球界を、そしてドラフト戦線を賑わす日が来るに違いないと確信していた。
あれから2年と経っていないというのに、及川の名前はすでに全国区になりつつある。ストレートの球速は最速152キロまで達し、早くも2019年のドラフト上位候補という声も聞こえてくる。ただし、本人が「エースの板川(佳矢)さんと違って、僕は波があるので......」と語るように、不安定な投球を見せることが多い。
中学時代から大きく変わったことがある。それは、球種をストレートと横のスライダーの2種類に絞っていることだ。及川は言う。
「いろんな球種をコントロールするのは大変ですし、リリースでなでるようなクセがついてしまうんです。まずはストレートの質を上げようということで、監督・コーチとも話して球種を絞っています。今、スライダーはストレートと同じ感じで腕を振れていますし、ストレートの質もよくなってきました」
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