東大法学部外野手にスカウトも注目。志すは赤門初のプロ野手か司法の道 (3ページ目)

  • 松本英資●文 text by Matsumoto Hidesuke
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「教育方針は、がっちり勉強というよりも、部活と勉強の両立を目指す学校です。さまざまな部活があるなかでも野球部が最も盛んで、中高6年間、思う存分、野球をやらせてもらいました。野球部のチームカラーは、バンバン打って勝つのではなく、機動力を生かして得点し、投手を中心に守備を固めて守り抜く野球でした」

 全体練習は、平日の週2回と月2回の日曜日に限られる。しかも練習時間は2時間足らず。それ以外は自主練習で補うしかない。早朝と昼休みに各30~40分、さらに全体練習のない日の放課後1時間といった具合に、時間を見つけては練習に充てた。

「朝練はダッシュなどランニング中心のメニューをこなし、放課後の練習の最後には必ずウエイトトレーニングをするなど、体力づくりに重点を置いていました。おかげで脚力は鍛えられたと思います。生まれながらにして体つきがよく、筋肉がつきやすい体質なんです。だから、それほどウエイトトレーニングをやり込まなくても、筋肉がつく。そういう体に産んでくれた親に感謝するしかありません」

 高校3年のとき、辻居はチームの中心選手として投打で活躍を見せる。県大会決勝まで勝ち進み、関東大会出場を果たした。関東大会出場は、ちょうど10年前に長男の活躍で優勝したとき以来の快挙だった。だがチームは、初戦でタイブレークの末に涙を呑んだ。以後、再び野球から距離を置き、大学受験勉強に励んだ。

「次男と三男が揃って東大へ進学したのがきっかけになって、自分も東大を目指すようになりました」

 毎年8月、東大野球部は翌年に入部を希望する高校生および受験浪人生を対象に練習会が行なわれる。当然、参加したからといって合格できる推薦制度などない。東大野球部に入るには、まずは日本一難関といわれる入学試験に合格する以外に道はない。辻居は練習会には参加せず、ひたすら受験の準備をし、見事合格を果たした。

「栄光学園の野球部は、東大野球部に入りたくて受験する部員が多い中、僕は野球部に入ることよりも東大に現役合格することを第一目標に掲げました。東大に受かってから、野球部に入るかどうかを考えようと......。野球部の同級生20人のうち10人が東大へ進学。そのうち野球部に入部したのは、僕を含めて2人だけでした」

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