坂本勇人の恩師も信頼。明秀日立の遊撃手はガンガン振ってプロも目指す

  • 高木遊●文・写真 text&photo by Takagi Yu

「もう自分たちの夏か......って感じですね。早いです」

 大阪から茨城県北部の日立市にやってきた2年ちょっとの歳月を、増田陸は感慨深く振り返る。この春、憧れ続けた場所で鮮烈な活躍を見せた強打の遊撃手は、最後の夏に最大のライバルとの再会と夢の実現を狙う。

今年春のセンバツでも活躍した明秀日立の主将・増田陸今年春のセンバツでも活躍した明秀日立の主将・増田陸 今春、春夏通じて初めて甲子園に出場した明秀日立。1番打者として打席に立った増田は、初球を弾き返すと打球はレフトフェンスを直撃。試合開始のサイレンも鳴り止まぬなか疾走し、三塁へ。相手野手の送球が乱れるのを見て本塁を狙うもタッチアウト。それでも積極果敢なプレーはチームに勢いをもたらした。

 初戦、2回戦を勝利した明秀日立は3回戦で大阪桐蔭と対戦。大阪桐蔭の主将・中川卓也とは大阪福島シニアの同期で、中学時代は増田が遊撃手を任され、中川は二塁手兼投手だった。ちなみに捕手には、現在、早稲田実業3年の野村大樹がおり、春夏連続でリトルシニアの全国大会で8強入りしていた。

 中川や野村が2年時から甲子園で活躍しているのに対し、増田は金沢成奉(せいほう)監督から「お前はなにしとんねん!」と何度も発破をかけられたが、ようやく念願を果たし、待ちに待った対戦が実現したのだった。

 しかし、増田は4打数無安打。対する中川は4打数2安打1打点と勝利に貢献。試合後に中川から「次は夏やな」と声をかけられた。

 そしてこの試合から、多くのことを学んだと増田は言う。

「大阪桐蔭は(失投を)1球で仕留めてきたり、バントの構えをしたら内野手全員がチャージをかけてきたり......。(ピッチャーだった)根尾(昂/あきら)くんは、打者の空振りとかを見て配球を組み立てていました」

 そう振り返り、すぐさま「そうなるためには練習の1球1球から集中することが必要です」と話す姿は、まさにチームを引っ張るリーダーそのものだ。

 光星学院(現・八戸学院光星)時代に坂本勇人らを育てた金沢監督は、「前までの増田だったら、叱るとシュンとなったり、納得いかない表情をしたりすることがありましたが、今はなくなりました。上へ上へと伸びようとしていますね」と、精神的にも成長した姿に目を細める。

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