歌って踊れるプロ野球選手に。ミュージカル俳優が独立リーグで初舞台 (4ページ目)

  • 井上幸太●文・写真 photo by Inoue Kota

 背番号は53。劇団四季の53期生としてキャリアをスタートさせた"初心"を忘れないように、という思いが込められている。

"独立リーガー"としての生活が本格始動して約1カ月が経過し、自身の課題と向き合う日々が続いている。

「投手としての経験値が絶対的に不足していることもあって、サインプレーやセットプレーに悪戦苦闘しています。課題は山積みですね」

 自身の現状を苦笑しながら分析する和田だが、その表情はどこか楽しそうでもあった。

「次々と浮かび上がってくる課題をすべて消化できれば、自分が想像もつかないような成長ができるんじゃいないかという期待もあります。課題の多さは、裏を返すと"伸びしろ"だとも思っていて......」

 中学時代、監督にチーム目標の変更を進言したように、元来、和田は段階的に目標を設定するタイプ。それはミュージカル俳優時代も変わらなかった。20歳でこの舞台に出る、その後は主演を務める......といったように、細かな目標設定を行ない、「1年後どうなっていたいか」といった類いの質問には即答することができた。しかし、野球に関しては、まったく"未知数"だという。

「巨人の入団テストを受験すると決意してから、現在までの半年間だけでも、自分の想像もつかないスピードで進んでいて。このまま成長できるかもしれないし、どこかで故障してしまうかもしれない。自分でも予測できないというのが本音です」

 本人がこう語るのも無理はないほど、この半年間で描いた成長曲線は劇的なものだった。2次の投球テストで最速128キロだった球速は、現在135キロにまで到達。50m走8秒5、遠投80m未満から再スタートを切ったことが信じられないほどの成長を見せている。開幕が近づく前期シーズンの目標も「最速140キロ超え、登板を重ねる」とシンプルなものにとどめた。

 そんななか、独立リーグ挑戦にあたり、ひとつの揺るがない大きなテーマがある。「ミュージカルと野球の架け橋」の役目を果たすというものだ。

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