クロマティに殴られた男・宮下昌己が語る
地元中学の同級生・荒木大輔 (2ページ目)
端正な顔立ちで人気を博した荒木も、中学時代は目立たない存在だったというphoto by Katsuro Okazawa/AFLO 大輔は、中学に入学したときにはすでに170cmくらいあって体は大きかった。だけど、目立たない子でした。学校では悪ふざけをするわけでもなく、野球にすべてをかけているという感じ。ストイックでしたね。調布シニアで野球をやるためには、学校ではおとなしくしといたほうがいいということがわかっていたんでしょう。オレなんか、しょっちゅう職員室に呼び出されて説教を食らっているのに、大輔は目立つことを一切しない。学校生活においては、何もエピソードがない男です。
当時、神代中には9クラスあって、一学年に300人くらい生徒がいたのかな。運動会や球技大会、マラソン大会になると、シニアで硬式野球をやっているヤツや野球部員が花形でした。でも大輔は何をやらしてもそつなくこなすタイプでしたが、そうした校内行事ではあえて目立たないようにしていたと思います。学校で脚光を浴びるよりも、野球のことだけを考えているように見えました。そのころから、野球中心の考え方だったんでしょう。学校の球技大会でケガしてもしょうがないから。
オレの身長は、中学1年のときが160cmちょうど。170cmもある大輔に全力で投げられたら、バットに当たるはずがない。実際に対戦しなくても、そんなことは少し考えればわかります。とにかく、飛び抜けた存在でしたよ。
オレが所属していたころの神代中野球部は多摩地区では負けたことがなかったし、そこそこのレベルだったと思いますが、大輔がオレを意識することはまったくなかったでしょう。こちらがやっているのは軟式野球だし、大輔は世界一。当時、オレ自身も自分がプロ野球選手になるとは思ってもいませんでした。
そもそも、硬式野球をしている子が軟式のボールを投げることはありません。だから、キャッチボールすら一緒にしたことがない。オレも、「こいつはもう全然レベルの違うところで野球をやっているんだから」と思っていました。一度もライバルだと思ったことはないですね。同級生ではあるけれども、特別な存在でした。
それでも、早実1年の夏から、あれほどの成績を残すとは思いませんでした。"甲子園のアイドル"になって騒がれましたが、中学の同級生の女子に聞いても「荒木くん? あんまり覚えていない」と言う。数年前に中学の同窓会があったときも、「印象? 全然ない」と笑ってました。
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