「左投げサード」で快進撃。日立一高は21世紀枠で甲子園まで届くか (5ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 そんな清水の好投もあり、チームは5対1で快勝。ベスト4へとコマを進める。準決勝の相手は近年の茨城でトップクラスの実績を挙げている霞ヶ浦。この試合に3番サードで出場した清水は、4回裏に前述した三塁線の美技を見せてチームを救った。

 先発・綿引が霞ヶ浦打線を5回まで2安打に抑える好投で、0対0のまま試合は終盤戦へ。しかし、霞ヶ浦は6回裏に3番・小儀純也のタイムリー二塁打で先制すると、7回裏には8番・横田祥平に2ラン本塁打が飛び出す。日立一は8回から清水をマウンドに送って失点を防ぐが、打線が最後まで霞ヶ浦投手陣をとらえきれなかった。

「チャンスで打つのが自分の仕事なのに、それができませんでした。気負いはなかったんですけど、打ち損じました。まだメンタルと技術が足りませんでした」

 0対3で敗れた試合後、清水は悔しさを押し殺すように、静かに試合を振り返った。中山監督は「自分たちがやってきた、結果が出ていたことをこの試合でもできたと思うのですが......」と何度も首をひねった。指揮官も選手も、本気で優勝候補に勝てると自信を抱いて戦っていたのだ。

 最後に清水にサード守備のこだわりを聞くと、こんな答えが返ってきた。

「一番は欲張らないこと。アウトにできればそれでいいと考えています」

 観客を沸かせてやろう、目立ってやろう。そんな野心はない。ただチームの勝利に近づくために、自分にできるプレーをする。そんな清水の職人気質がにじむ言葉だった。

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