なぜそこにいる? 東海大菅生は神出鬼没の「忍者」がショートを守る
打球は快音を響かせ、強烈なライナーとなって三遊間に飛んだ。その打球を放った高岡商(富山)の4番打者・筏秀生(いかだ・ひでお/2年)は「少し泳がされたけど自分のスイングができた」と確かな手応えを感じながらも、打球の行方を見て落胆したという。
「ショートがそこにいたので、『あ~あ』と。なんでそこにいるんだよ......と思いましたね」
8月14日の高岡商対東海大菅生(西東京)の甲子園2回戦。高岡商は1回裏に二死二塁と先制のチャンスをつくるも、筏の強烈な打球はショートライナーとなり、無得点に終わっている。
華麗な守備で何度もチームのピンチを救ってきた東海大菅生・田中幹也 一方、東海大菅生の捕手を務める鹿倉凛多朗(しかくら・りんたろう)は、投手の松本健吾が筏に投球する際、松本の背後で何かが動いたことを目撃している。
「(ミットを)構えた瞬間、幹也が三遊間に寄ったのが見えました」
東海大菅生の2年生遊撃手・田中幹也は試合前にこんなことを言っていた。
「松本さんはコントロールがいいので、バッターを見て『確実にこっちにくるだろうな』というときは、バッターが打つ前から動きます」
まさに、その言葉通りの動きだった。甲子園球場で見ていた者も、テレビ中継で見ていた者も、おそらくほとんどの人間が「強い正面のライナーを落ち着いて捕った」程度にしか思っていなかったことだろう。しかし、田中には明確な意図があった。
「4番の選手は引っ張るので、三遊間に寄っていました。定位置で守っていたら抜けていたと思います」
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