「センターの神様」を信じる横浜高・増田珠。涙はなし、プロで会おう (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 多くの高校野球ファンは増田のことを「横高(よここう)らしくない選手」と評する。横浜といえば、かつて渡辺元智監督、小倉清一郎部長の名コンビによって、数々の金字塔を打ち立てた。能力の高い選手が緻密な野球を実行し、勝利に近づく。自由奔放な選手よりも、高度な技術を仕込まれた野球IQの高い選手が重大な任務を遂行するようなイメージが強い。

 しかし、時代は変わった。若い平田徹監督が就任して以来、往時の横浜らしさを残しつつ、より選手をスケールアップさせるチームカラーになっている。天真爛漫な増田は「平田野球の申し子」と呼べる存在なのかもしれない。

 4万7000人の大観衆で埋まった秀岳館(熊本)との1回戦。試合前の取材で増田に聞いてみた。「この試合で初めて増田選手のことを見る野球ファンもいると思います。そんな人に自分のどんなプレーを見てもらいたいですか?」と。増田はやはり真っすぐこちらを見つめて、こう答えた。

「野球を楽しんでいるところですね。『こんなに楽しんでいる人がいるんだ!』と思うくらい、元気ハツラツとした、全力のプレーを見せたいです」

 そして、いざ試合開始を告げるサイレンが鳴ると、「新生・横浜」の良さと悪さがともに顔を出す試合になった。

 この試合で横浜が記録した残塁は0。一見、効率がいいように思えるが、その中身は今の横浜を象徴していた。出塁した8人のランナーのうち、4人は本塁に生還したものの、残りの1人は併殺打、そして3人は走塁死した。

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