「センターの神様」を信じる横浜高・増田珠。
涙はなし、プロで会おう

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 センターのポジションにたどり着いた増田珠(ますだ・しゅう)は、おもむろにバックスクリーンに向かって深々と頭を下げる。1秒、2秒、3秒......、じっと動かない。時には10秒以上もお辞儀したまま、頭を上げないこともある。

 増田はこのとき、「センターの神様」に挨拶し、祈っているという。

「バックスクリーン全体を見ながら、甲子園のセンターの神様に『また戻って来られました』と挨拶して、『夏の大会でいいプレーができますように』と祈るんです。甲子園の神様に好かれたらいいなと思って(笑)」

プロ注目の外野手、横浜高の4番・増田珠プロ注目の外野手、横浜高の4番・増田珠 まだニキビの残るあどけない顔立ちで、真っすぐこちらの目を見て言われたら、その存在を信じずにはいられなくなる。もし増田が「サンタクロースはいる」と言えばいるのだ。そう思いたくなるような純真さ、真っすぐさがある。

 甲子園に出る選手、とりわけドラフト候補ともなると、なかには「スレ」を感じる選手が出てくる。何度も繰り返される同じ質問、勝手につけられる的外れなキャッチフレーズ、自分ばかりが注目されることで起きる周囲との摩擦......。自然と言葉に張りがなくなり、つまらなそうに受け答えする選手が何人か現れるものだ。しかし、増田にそんなスレを感じたことが一度もない。

 増田はメディアに「どんな選手になりたいですか?」と問われると、いつもこう返している。

「小さい子どもに夢を与えられるような、『増田のような選手になりたい』と言われる選手になりたいです」

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