清宮、野村の早実打線で、なぜか
「恐怖の9番」野田優人が打点荒稼ぎ
不思議な選手である。
早稲田実業の9番・遊撃手を務める野田優人(のだ・ゆうと/2年)のことだ。身長181センチ、体重70キロのやせ型。試合前のシートノックを見ていても、とりたてて秀でているところを感じない。打球を追う足運びも、グラブさばきも、スローイングも平凡。しかし、試合が始まってみると意外に思えるほどミスが少ない。
センバツ初戦の明徳義塾戦で5打数3安打4打点と活躍した早実の野田優人 打撃も同様で、打席でのたたずまいはいかにも非力で頼りなく見える。それなのに、ここぞという場面で打席が回ってきては、ことごとく結果を残す。早実の和泉実監督も野田のことを「勝負強い選手です」と評する。
今春のセンバツ甲子園初戦・明徳義塾戦では5打数3安打4打点。チームの全5得点のうち4得点は野田のバットから生まれた。18対17の大乱戦となった春季都大会決勝戦の日大三戦で、延長12回裏にサヨナラヒットを打ったのも野田だった。
あらためて言うまでもないが、早実というチームの核は超高校級のスラッガーである清宮幸太郎(3年)と野村大樹(2年)の3、4番である。しかし、すでに多くの野球ファンが気づいているように、早実は「清宮・野村を抑えればどうにかなる」というチームではない。野田を筆頭に、脇を固める選手は「曲者(くせもの)」が揃っている。
早実のウィークポイントが「投手力」にあるのは、誰の目にも明らかだ。茨城で開催された春季関東大会では、初戦の花咲徳栄戦で9失点(延長10回タイブレーク)、敗れた準々決勝の作新学院戦は8失点を喫した。「エース」と呼べるような軸が存在せず、複数の投手で何とか耐えしのぐ試合が続いている。
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