清宮幸太郎に真っ向勝負。関東一・高橋晴との「全打席」レポート (5ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

「わかっていましたけど、いつか止まると思っていたので。(四死球で)塁に出られているので、オーケーと思っていました」

 清宮は5打席で2度出塁し、いずれもホームを踏んでいる。米澤監督が語ったように、打席にいなくても存在感でプレッシャーをかける貢献度も計り知れない。そして、たとえ主砲がノーヒットであろうと、周りの打者がカバーして大量得点を奪う、早実打線の強力さが浮き彫りになった試合だった。

 また、これまで多くのバッテリーが清宮との真っ向勝負を避けてきたなかで、高橋が見せた投球は鮮烈だった。特に勝負球として内角いっぱいのコースにストレートを続けて投げ込んだ投手はいなかったのではないか。今までも清宮の内角を攻めるバッテリーはいたが、必ずボールゾーンに外すか、なかば「当ててもいい」という考えが透けて見えるような乱暴な配球だったこともあった。

 高橋が投じた「内角の勝負球」について清宮に聞いてみると、清宮は表情を変えずにこう答えた。

「外のボールがあるぶん、インコースがいい風に見えました。外を打ちにいこうとしたぶん、内に対応できなかった。でも、それはしょうがないです」

 早実打線の前にあえなく敗れた高橋だが、まだまだ底知れぬ可能性を秘めている。米澤監督は高橋の将来性を口にした。

「高橋はまだ身長が止まっていません。骨格が固まっていないので、今までは負荷をかけたトレーニングや投げ込みができていないんです。でも、彼は高校野球で終わりの選手じゃありません。追い込んだ練習ができていない今の段階ではプロどうこうは言えませんが、いずれは上のステージでやれる子です」

 関東一は東東京、早実は西東京のため、高橋と清宮が甲子園行きをかけて戦うことはもうない。しかし、今後もしびれるような対決を繰り広げていく予感を感じさせた2人の名勝負だった。

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