「これがオレの生きる道」。変則フォームで戦う球児たちの心意気

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 甲子園大会に出場している選手は、言うまでもなく各地の地方大会を勝ち抜いた選りすぐりの精鋭たちである。だが、試合を見ていると「どうしてこの形に行き着いたのだろう?」と不思議に思ってしまうような、珍しいフォームの選手に遭遇することがある。そんな今大会で見つけた「変則フォーム」の3選手にスポットを当ててみたい。

 大会の開幕前から「テイクバック・ゼロ投法」と話題になっていたのが、東北(宮城)のエース左腕・渡辺法聖だ。

初戦の横浜戦で14安打、7失点と打ち込まれた東北のエース・渡辺法聖初戦の横浜戦で14安打、7失点と打ち込まれた東北のエース・渡辺法聖 通常、投手は投球する際にボールを持った腕を二塁側に回す「テイクバック」と呼ばれる動作をとる。渡辺のテイクバックは厳密には「ゼロ」ではないのだが、極端にコンパクトで「それで力強く腕が振れるのか?」と疑問が湧くほどだ。渡辺本人にこのテイクバックが生まれたきっかけを聞いてみた。

「コントロールが悪くて、フォームもバラバラで、肩も痛くて......。投げられない時期が続いたので、『どうやったらいいフォームで投げられるかな?』と考えていました。それからいろいろと練習して感覚をつかんで、今年の1月頃、最終的にああいう形になりました」

  テイクバックが極端に小さいのは「腕の回し方がわからなくなった」という時期があり、そのなかでもキレのあるボールを投げるために試行錯誤した結果だった。フォームを固めるまでには、同じくテイクバックの小さな小石博孝(西武)のフォーム動画を見て、研究したという。

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