ドラフト戦線異状あり。田中正義の右肩不安でスカウトたちが大混乱 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Jiji Photo

 3月のこと。創価大のオープン戦で田中のピッチングを毎週のように見る機会があった。昨年秋から2月あたりにかけて、肩に"違和感あり"と伝えられていたから、1試合3イニング程度から始めて、肩と相談しながら徐々に出力を上げていた。次第に上り調子になってきたように映ったが、田中の表情が笑顔になることは一度もないまま、リーグ戦に突入してしまった。

 田中という人間は、結構、顔に出るタイプだ。特にマイナス方向の感情はすぐ出てしまう。それだけに、150キロ台の剛速球で空振り三振を奪っても、顔をしかめる姿を何度も見てきた。その表情を見たとき、「痛いのかな!?」と思ったものだ。

「やっぱり」と思った理由は、もうひとつある。

 それが田中の動きすぎる肩甲骨だ。これは今に始まったことではない。2年前の大学選手権の頃からそうだった。

 田中の背番号が見える角度からフォームを見ていると、テイクバックのときに、ユニフォームの上からでも背中の右半分がグニャッと左へ動くのがわかる。豪快なテイクバックから、それ以上に豪快でダイナミックな腕の振り。これは田中の財産でもある。

 しかし、その反面、肩甲骨の可動域が広ければ広いほど、関節の摩擦は大きくなり、ダメージを受ける筋肉の面積は広くなり、いわゆる"負担"は大きくなる。

 かつて、「天才本格派」と言われた元ヤクルトの伊藤智仁(現・投手コーチ)の野球人生を"太く短く"終わらせてしまったのも、この肩甲骨の可動域の広さのせいだと言われていた。

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