近づく夏。逸材の宝庫・横浜高に「激戦の神奈川」を勝ち抜く強さはあるか (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 そして8回裏、先頭打者をテキサスヒットで出したものの、続く打者を平凡なレフトフライに抑え、1死一塁。福永が「なんとなく安心感というか、エアポケットに入ってしまった」と悔やんだように、3番・山田啓への初球だった。インコースに構えた福永のミットよりも、甘く高めに入った藤平のストレートは、山田啓によってライトスタンドまで運ばれた。

 昨秋、常総学院・宮里に逆転ホームランを浴びたことで、「1球の怖さを知った」という福永だったが、横浜バッテリーはここでも手痛い一発を浴びてしまった。

 平田監督は言う。

「この2点はいけません。藤平には苦言を呈して、戒めました。藤平のストレートは、当たると飛んでいってしまう。試合前から、相模の山田くんは一番警戒するバッターだという話をしていました。それにしては、初球に不用意にいってしまったなと。彼の悪いクセだと思います」

 藤平はここで降板し、入れ替わる形でライトを守っていた石川がマウンドに上がった。石川は決して派手さはないものの、平田監督が「彼らしい、勝負強いピッチング」と評した投球で、東海大相模に傾きかけた流れをせき止める。

 試合はそのまま延長戦にもつれ込み、11回表。横浜はライトに回っていた藤平が左中間にタイムリー二塁打を放ち、勝ち越し。その裏を石川が抑えて5対4で再び東海大相模を退けた。

 両チームの個々の力量を見ると、横浜が東海大相模をことごとく上回っているように見えた。だが、試合になればまさに紙一重。どちらが勝ってもおかしくない好ゲームになった。

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