出塁率なんと8割! 花巻東・千葉翔太が見せる「極上の技術」

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 森友哉(大阪桐蔭)や安樂智大(済美)といったスターが姿を消した甲子園で、スタンドの心を掴む選手がいる。花巻東のセンター・千葉翔太(左投左打)だ。千葉の身長は今大会出場選手の中で最も低い156センチ。本人は「もらえるものなら180センチの身長がほしい」と言うが、「短所は長所」と考え方を変え、「的が小さく相手が投げづらいのが武器」と身長の低さを最大限に生かしている。

ここまで10打数7安打と高打率を残している千葉翔太ここまで10打数7安打と高打率を残している千葉翔太

 そして千葉の最大の武器は "ファウル打ち"の技術だ。2ストライクまではバントの構えでゆさぶり、追い込まれてからはバスターのような構えに変えてカットする。初戦(2回戦)の彦根東(滋賀)戦では、第2打席で13球粘って四球を選ぶなど、5打席通算で計34球。準々決勝の鳴門(徳島)戦でも第1打席に7球ファウルで粘り、13球目で四球を選ぶなど、5打席で計41球を相手投手に投げさせた。

「球数を多く投げさせることで相手ピッチャーにダメージを与えることができる。自分は出塁することが仕事。小さいなりにできることをいつも考えています」

 実は、これは花巻東の伝統でもある。菊池雄星(西武)を擁してベスト4に進出した2009年夏にも、身長155センチの左打者・佐藤涼平が2番打者を務め、徹底したファウル打ちで甲子園を沸かせた。ボールを手元までひきつけて、顔はホーム方向に戻しながらバットを出す。真横に向かって打つイメージだ。佐藤は何度も甲子園の三塁側ベンチに打ち込み、「(当時ベンチ内にあった)扇風機を壊して怒られました」と苦笑いしていた。その佐藤の活躍をテレビで見て刺激を受けた千葉は花巻東に進学。憧れの先輩と同じ「2番・センター」のポジションを掴んだ。

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