この夏の甲子園で噴出した「高校野球の問題」

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

 前橋育英(群馬)の初出場、初優勝で幕を閉じた第95回の記念大会。初出場、初優勝は1991年の大阪桐蔭以来、実に22年ぶりの快挙だった。

 快進撃の原動力は、何といってもエースの高橋光成(たかはし・こうな)。188センチの長身から長い腕をしっかり振り、ストレート、スライダー、フォークとすべての球種で三振が奪えるなど、完成度の高さを見せつけた。疲労が蓄積されてもストライクゾーンの高低、左右、さらに奥行きを使ったピッチングで打者を打ち取り、6試合で50イニング、687球を投げ切った。スカウトの中には、「球界のエースになれる逸材。ダルビッシュ有や田中将大のように即戦力としてプロ入りできる素材」と絶賛する者もいたほどた。

前橋育英の初出場、初優勝で幕を閉じた今年の夏の甲子園前橋育英の初出場、初優勝で幕を閉じた今年の夏の甲子園

 その高橋と同じ2年生で、大会前から注目を集めていたのが済美(愛媛)のエース・安樂智大。センバツでは5試合で772球を投げ、チームを準優勝に導いたが、この夏は体調不良により本来のピッチングができず3回戦で敗退。しかし、甲子園最速タイとなる155キロをマークし、130キロ台のスライダーを左打者のインコースに投げ込むなど、センバツよりも成長した姿を見せた。

 このふたりを筆頭に、今大会は2年生の活躍が目立った。他にも、丸亀(香川)戦で豪快な一発を放った横浜高の高濱祐仁や1試合5安打をマークしたチームメイトの浅間大基。惜しくも初戦敗退となったが、センバツ優勝投手の浦和学院・小島和哉など、将来性豊かな逸材が揃い、今後どこまで成長するか楽しみだ。

 また、大躍進を遂げたのが東北勢。6校中5校が初戦を突破し、花巻東(岩手)、日大山形の2校がベスト4入り。東北の2校が4強入りするのは24年ぶりだった。また、春夏合わせて初出場の聖愛(青森)も3回戦まで進んだ。一昨年の夏から昨年の夏まで光星学院(現・八戸学院光星)が3季連続準優勝を果たしたように、東北勢のレベル向上は明らか。現在、東北勢はセンバツの出場枠が2枠しかない(近畿は6枠)が、見直しの時期にきているのではないだろうか。

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