2013.03.04

【WBC】侍ジャパン2009「チームを救った名脇役」

  • 柳川悠二●取材・文 text by Yanagawa Yuji
  • photo byTaguchi Yukihito

【プレイバックWBC2009】
イチローや松坂大輔のような華やかさはないが、
自らのプレイスタイルを貫き、ジャパンを勝利に導いた
男たちがいた。もちろん、彼らの活躍がなければ
ジャパンの快進撃もなかったにちがいない。

ベテランとしてチームを牽引した稲葉。グラウンドの内外でその存在感が光った
野球に向かう姿勢でチームを鼓舞した稲葉

 第2回WBCにおいて、打の主役がイチローや青木宣親ならば、投の主役は松坂大輔、ダルビッシュ有に岩隈久志の三本柱。それに異論はない。だが、彼らが脚光を浴びる陰で、”脇役”たちの献身的な援護があったことも見逃すわけにはいかない。

 チーム最年長の稲葉篤紀は、チーム発足当初、原辰徳監督に4番を任された。「つなぎ」を徹底した指揮官は、長打が期待できる打者よりも空振りの少ない堅実な稲葉を打線の核に据えようとした。

「本塁打を打てるバッターはいくらでもいるので、出塁率を上げたい」

 調整試合の段階では面白いように稲葉の活躍が目立った。宮崎合宿における巨人との練習試合初戦では、「あくまでヒットの延長線で」ライトスタンドに本塁打を放った。そして試合後は黙々とロングティーを行なって体をいじめた。

 4番を告げられた際、稲葉が「頑張ります!」と意欲を見せると、原監督は即座に「頑張らなくていい」と返答した。このやりとりには稲葉の野球に向かう姿勢を自然に見せてくれるだけで、若い選手も自ずと彼の姿勢に倣(なら)うだろうという指揮官の思惑が見て取れる。

 しかし、WBCが開幕してからは、稲葉の存在感が徐々に薄らいでいった。初戦の中国戦を4打数1安打で終えると、左投手が先発する試合でスタメンを外され、代打で出てもつなぐ役割に徹せられない。

 第2ラウンド初戦のキューバ戦後には結果が出ていないもどかしさを口にし、珍しく弱音を吐いた。