【高校野球】ついに160キロ!
「怪物」続々誕生にダルビッシュ有の陰 (3ページ目)
ちなみに「ナニワのダルビッシュ」と呼ばれる藤浪は、ダルビッシュがまとめた『変化球バイブル』(ベースボールマガジン社)を愛読しており、野球に対する考え方や意識の高さに憧れを抱いているという。
当のダルビッシュは、東北高時代にトレーニングの大切さに目覚めたという。東北高に入学した当初は体が硬く、成長痛も抱えていた。そのためしばらくは、下半身強化のためにプールでの大股歩行と徹底した柔軟体操とを繰り返していた。当時、ダルビッシュを指導していた若生正廣監督(現・九州国際大付属高監督)は、「高校野球の世界で、これだけこだわってやってきたチームはなかったはず」と言うほど、股関節のトレーニングに力を入れてきた人物でもある。
「ピッチャーならリリース、バッターならインパクトでどれだけボールに力を伝えられるかが勝負。そのために下半身の力をいかに効率よく伝えられるか。そこで股関節の柔軟性が必要になってくるんです」
ダルビッシュに関しても、「股関節の柔軟性」さえ手にすれば、末恐ろしいピッチャーになると直感したという。徹底してトレーニングに取り組んだ結果、1年で180度近く開脚できるようになり、それに伴いボールの威力も格段に増したという。
そのダルビッシュが、今年のMLBのオールスター出場会見の席で、日本球界のトレーニングに対する意識改革の必要性を訴えた。メジャーの一流選手と日本人選手との体格差について問われたダルビッシュは、「体が違うのではなく、(日本とは)そもそもトレーニングの内容が違う」と発言。さらに、「日本では筋肉を増やすと体が重くなり、動きが悪くなるとの考えが広がっている」と続け、「そういう固定観念に縛られすぎて、野球がまったく伸びていないと思う」と言い放った。
日本球界を愛するがゆえの叱咤ということもあったのだろうが、とはいえ、トレーニングの意識は一昔前に比べ確実に高くなっている。90年代前半、近鉄バファローズ(現・オリックスバファローズ)で野茂英雄や吉井理人らの支持を得た立花龍司コンディショニングコーチの登場や、選手でいうならイチローの影響も大きかっただろう。合理的なトレーニングの必要性が徐々に認知されるようになってきた。
柔軟な発想を持った高校野球の指導者が新しいトレーニング法を取り入れ、向上心の高い選手自ら積極的に学ぶ――その流れが新たな怪物誕生につながっているとすれば、大谷の160キロの衝撃も、まだ驚きの始まりなのかもしれない。
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