【大学野球】理工学部の豪腕
慶應大・福谷浩司が語る『卒論とドラフト』

  • 水田陽●文 text by Mizuta Akira
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

横須賀高校時代から愛知県では評判の投手だった福谷浩司横須賀高校時代から愛知県では評判の投手だった福谷浩司 慶應大学の4年生右腕、福谷浩司。高校時代からプロスカウトの注目を浴びてきた逸材が、今秋のドラフトの目玉となっている。大学2年の秋には、斎藤佑樹(日本ハム)、大石達也(西武)、野村祐輔(広島)らを抑えて、ベストナインに選ばれた。3年春には防御率0.59を記録し、最優秀防御率のタイトルを獲得。昨年の全日本大学選手権決勝では、東洋大の藤岡貴裕(ロッテ)と投げ合い、敗れはしたが球史に残る投手戦を演じた。その悔しさを胸に秘め、日本一にかける思いは誰よりも強い。

―― プロの世界で長く活躍された江藤省三監督の指導を受けて2年半が経ちました。学んだことは多かったのではないでしょうか?

「いちばん印象に残っていることは、負けたあとにどう振舞うかということです。監督は負けた時に選手以上に悔しがるんですけど、とにかく切り替えが早い。負けが続いてもいつもとまったく変わらない。『野球は甘い世界じゃない。たとえ負けたとしても、切り替えて次を見据えなければいけない』と教わりました」

―― 福谷投手自身も切り替えは早いほうですか?

「早いほうだと思います。打たれた時も、どうしようではなく、ピンチを楽しむくらいの気持ちでいます。つらい顔をしていると、相手に上から見られますし、チームの雰囲気も悪くなる。今年は結果が求められる1年になりますが、勝負を楽しむということは大事にしていきたいと思っています」

―― 福谷投手といえば、150キロを超すストレートがまず浮かびます。福谷投手のストレートとは?

「藤川球児(阪神)さんのような『押す』でもなく、ダルビッシュ有(レンジャーズ)さんのような『切る』でもない。イメージとしては『叩きつける』です。狙う場所は構えたキャッチャーミットよりも少し下。そのためにも腕を縦に振ることを意識しています。3年の春のシーズンは、いちばんいい投げ方ができていました。リリースまで無駄な力が一切入らず、リリースの時は『ピッ!』と音がしていました。でも、キャッチャーや打者に聞くと、『重い球がドーンとくる』感じだったらしいです」

―― 他にピッチングの時に意識していることはありますか?

「藤岡さんのような角度のあるストレートを目指しています。とにかく今は、ボールを軽く握って、高い位置からリリースすることに取り組んでいます。以前、宮本慎也(ヤクルト)さんが、前田健太(広島)さんのストレートを『打つのに集中力がいる球』と言われていたんです。それぐらいのことを言われるストレートを投げたいですね」

―― 変化球についてはどうですか?

「スライダーに関しては、ストライクを取りにいくのと、空振りを取りにいく2種類を持っています。ストレートと同じ腕の振りでないと意味がないので、縦ぶりで投げられる変化球にしました。一時期はスライダーの回転数をプログラミングして研究したこともあります。試行錯誤しているうちに、ツーシームの握りを少しずらして縦ぶりで投げたら、真横に曲がることがわかったんです。ナチュラルスライダーが進化した感じです。おそらくこの球は僕にしか投げられないかもしれません。あとは落ちる系の球を習得したいですね。そうすれば、さらにピッチングの幅も広がってくると思います」

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