球界に異変。キャッチャーは「守備力」より「打撃力」!?

  • 田沢健一郎●文 text by Tazawa Kenichiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 巨人・阿部慎之助のファースト転向に象徴されるように、球界は今、捕手の世代交代の時期に来ている。巨人をはじめ、広島、DeNA、阪神、ヤクルト、日本ハム、ロッテ......いまだ正捕手の決まっていないチームが多く、それぞれで熾烈なポジション争いが繰り広げられている。

昨年、ルーキーながら92試合に出場した阪神・梅野隆太郎昨年、ルーキーながら92試合に出場した阪神・梅野隆太郎

 そしてキャンプ、オープン戦と取材していると、現場からこんな声が聞こえてきた。

「たとえ捕手であっても、打ってもらわないと困る」

 捕手というのは性質上、バッティングより守りが重要視されるポジションだ。打撃力に難があったとしても、安定した守備力があれば正捕手につくことができた。それが、守りだけでなく打つことも要求されるようになってきたというのだ。

 野球解説者の野口寿浩氏は次のように語る。野口氏は捕手としてヤクルト、日本ハム、阪神、横浜でプレイし、卓越した守備力を生かし、日本ハム時代(1998~2002年)は正捕手として活躍。その他の球団でも貴重なバックアップ捕手として重宝された。

「昔は『捕手はまず守り。バッティングは2割そこそこ打てればいい』といった風潮でしたが、明らかに変わってきています。いくらディフェンス面で優れていても、打てないと試合に出られない。逆に、バッティングがよければ、守備は成長途上であっても試合に使ってもらえます」

 その筆頭が、阪神・梅野隆太郎だという。梅野は福岡大時代、リーグ戦で28本塁打を放ち、全日本でも4番を任されたスラッガーだ。ルーキーイヤーの昨年、梅野は92試合に出場し、打率こそ.197と低迷したが、7本塁打を放つなどパンチ力のあるところを見せた。先日、阪神のキャンプ地を訪れた野口氏は梅野の印象についてこう語る。

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