【自転車】片山右京「日本人が海外挑戦しづらい要因とは」

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira
  • TOBI●写真 photo by TOBI

遥かなるツール・ド・フランス ~片山右京とTeamUKYOの挑戦~
【連載・第39回】

 日本人として初めて近代ツール・ド・フランスを走った経験を持つ今中大介氏は、自転車ロードレースの厳しさを知る貴重な人材だ。「ツール・ド・フランス参戦」を目標とするTeamUKYOの片山右京にとって、今中は欠かせない存在だと語る。4回にわたってお送りする『片山右京×今中大介対談』の第2回では、「日本と世界との差」について話が広がっていく。

(前回のコラムはこちら)
世界で戦うためにはどうすればいいのかを語る片山右京世界で戦うためにはどうすればいいのかを語る片山右京
片山右京×今中大介対談 【第2回】

――第1回の対談で、片山さんはチーム作りについて、「しっかりとした基盤を整えることが重要」と語っていました。新興チームで自転車ロードレース界に参戦しようと思ったときの考えを聞かせてもらえますか?

片山 新興チームが普通に参入しても、すぐに勝てるわけがない。だから、(アイデアを)ひとひねり入れなきゃいけないし、ひとりじゃなくてみんなでやれば、勝てる可能性は高まるかもしれないとも思いました。だけど、それもまた、やってみなきゃうまくいくかどうかなんて分からない。

今中 僕はヨーロッパのシステムばかりを見てきたのですが、たとえばトレック(・ファクトリー・レーシング/アメリカ)や、キャノンデール(・プロサイクリング/イタリア)のような大きな組織は、チームを持つ段階ですでに巨大な企業でした。その前提があるので、TeamUKYOがゼロからチームを始めていくのはすごく大変だろうなと思います。

片山 (チーム作りは)お金がないと何も始まらないんだけど、僕たちにはそれすらなくて、すべて同時進行でやっている状態ですからね。

今中 僕自身、現役を引退して会社(競技用自転車や関連パーツの輸出入・販売を行なう企業『株式会社インターマックス』)を立ち上げたときは、「選手あがりで本当に商売できるのか?」と疑われたところから始めました。ただ、まったく無知な状態で死に物狂いでやっているうちに、多少は周囲から信頼を得て、仕事のお付き合いをしてもらえるようになりました。そして、右京さんにも助けてもらえるようになった。

片山 いや、それはまったく逆でしょう。少なくとも今中さんがいなければ、僕は自転車の世界にいないわけだし(片山右京「僕が自転車にハマッたある人との出会い」参照)、うちのチームがツール・ド・フランスを目指す大きな理由のひとつである、「今中さんをもう一度、シャンゼリゼに連れていく」というテーマだって、全然揺るがない。今中さんは僕が知らないことの多くを全部見てきた人で、言葉ではオブラートに包んで優しく伝えてくれるけど、本当はいっぱい引き出しがある。だから今、僕たちにやってくれていることも、100パーセント全部、助けになっているんですよ。業界全体を変えるなんて、とても僕からはおこがましくて言えないけど、きっとみんなの利益になっていると思うし、いつかちゃんと恩返しができる日が来ると思います。

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