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【自転車】片山右京「ツール・ド・フランスを楽しく観戦するツボ」

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira photo by AFLO

遥かなるツール・ド・フランス ~片山右京とTeamUKYOの挑戦~
【連載・第14回】

 7月5日から約3週間かけて行なわれている第101回ツール・ド・フランスは現在、全コースの約3分の2を過ぎたあたり(最終日は7月27日)。そのレースの道程は、平坦なコースから山岳コースまで、様々な顔を持ったレイアウトで構成されている。それらの全工程をゴールまで最短時間で走り切った選手が、栄光のツール・ド・フランス覇者となる。しかし、ツールの魅力はそれだけではない。より楽しく観戦するためのツボを、今回は紹介する。

(前回のコラムはこちら)

総合首位を示すイエロージャージ「マイヨ・ジョーヌ」を着て走るヴィンチェンツォ・ニーバリ総合首位を示すイエロージャージ「マイヨ・ジョーヌ」を着て走るヴィンチェンツォ・ニーバリ 現在開催中のツール・ド・フランスをはじめ、複数の日程で行なわれるステージレースでは、日々のステージのコースレイアウトはどれも異なる。レースのオーガナイザー(主催者)は毎年、バラエティに富んだコースを用意し、長いレース期間中には様々なタイプの脚質の選手が、それぞれの持ち味や実力を披露する見せ場がある。

 スプリンタータイプの選手は、標高差の少ない平坦なコースで、パンチの効いたスピード力を発揮する。一方、クライマータイプの選手は、険しい坂道が連続する山岳ステージで、常人にはとても不可能な急勾配をぐいぐいと登ってゆく。

 これらの争いを巧みに演出するのが、総合優勝争いに加え、山岳やスプリント用に設定された賞典・ポイント争いだ。

 自転車ロードレースは、日々の走行時間が4時間から5時間と長く、しかもその時間中には様々な駆け引きも行なわれるため、レースに馴染みのない人々からは、「見どころが分からない」という声をよく聞く。しかし、観戦初心者でも(だからこそ?)、この各賞の意味や意義を理解できれば、競技を愉しく観戦するポイントも見つけやすくなるはずだ。この「レースが面白くなるツボ」を、ツール・ド・フランスに即して説明してゆこう。

 ステージレースの総合優勝は、全日程の総走行時間の最も少ない選手に対して与えられる。長いレース期間中に、この総合優勝争いで首位に立っている選手(=最も総走行時間の短い選手)が、翌日のステージで、『マイヨ・ジョーヌ(maillot jaune/フランス語でイエロージャージの意味)』を着用する権利を得る。

 つまり、ある日のステージで、このマイヨ・ジョーヌを着用して走行している選手は、その時点で彼が総合優勝争いの首位につけている、ということを意味する。そして、最終日のステージが終了した段階で、このマイヨ・ジョーヌ着用の権利を手にしている選手が、その年のツール・ド・フランス総合優勝を獲得する、というわけだ。ちなみに、同じくグランツールのジロ・デ・イタリアでは、『マリア・ローザ(maglia rosa/イタリア語でバラ色ジャージの意味)』が、ブエルタ・ア・エスパーニャの場合は、『ヘルセイ・ロホ(jersey rojo/スペイン語でレッドジャージの意味)』が、総合首位の選手に対して与えられる。

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著者プロフィール

  • 片山右京

    片山右京 (かたやま・うきょう)

    1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。

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