【自転車】片山右京「戦略を組み立てられなかった結成1年目」 (2ページ目)
UCIアジアツアーに関しては前回や前々回に説明したとおりだが、Jプロツアーについては、若干の説明が必要だろう。これは、全日本実業団自転車競技連盟が主催する国内ロードレース選手権で、全国各地で年間約20戦のレースを転戦し、総合優勝を競う。サッカーでいえばJリーグに相当するシリーズ戦だが、自転車ロードレースは実業団時代の名残(なごり)を今でも色濃く残しているため、比喩としてはバレーボールのVリーグなどのほうがむしろ近いかもしれない。
そのJプロツアーに、TeamUKYOは結成直後の2012年から参戦を開始した。
参戦初年度の年間総合成績はチーム4位、個人の最高位は5位という結果で終えた。2年目のシーズンとなった2013年は、この年に加入したホセ・ビセンテと土井雪広が抜きん出た強さを見せつけて、個人総合優勝と2位をそれぞれ獲得。チーム成績でも当然ながら、年間総合優勝を獲得した。
このTeamUKYOに、結成初年度から所属している唯一の選手が、キャプテンの狩野智也だ。
1973年生まれの狩野は、大学時代から頭角をあらわし、卒業後は名門実業団チームを経て欧州や日本のレースを転戦してきた。TeamUKYOに参加する前年は、実力チームのチームブリヂストン・アンカーに所属していた。
狩野が2011年末にチームに加入した理由は、片山の自転車レースに賭ける熱い思いを知ったからだという。
「当時の右京さんは、(宇都宮)ブリッツェンで選手としてレース活動をしていたので、『自転車が好きなんだな』と思って見ていました。その彼が本気でチームを立ち上げるので、ぜひそこに加入しないかと誘ってくれる人がいたんです。その当時、自分の年齢も30代半ばを過ぎて、人材育成なり、チームキャプテンなり、そういったなにかプラスアルファがなければ現役を続けていくことは厳しいだろうと感じていたところでした。若手選手を育てることは好きだったし、しかも、将来プロツアーを目指して欧州を目標にするチームの立ち上げから参加できるとなれば、それは非常にやりがいのあることなので、加入を決断したというわけです」
しかし、結成初年度のチームの実力は、狩野の予想を大きく下回る水準だった。
「よーいドン、で、ちょっとアップダウンがあったりすると、もう誰も自分の周りにいない(笑)。スプリントに強い選手はいたので、彼と相談しながら進めていったんですが、なによりチーム全員でレースの戦略を組み立てることができない。思っていた以上にハードルを下げなきゃいけないな、ということを痛感した、そんなシーズンでしたね」
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