【新車のツボ104】ジープ・チェロキー・ロンジチュード試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 アメリカに本拠を置くジープは、第40回のラングラーの項でも紹介したように、今をときめくSUVの元祖ブランドである。そういうプライドもあってか、SUVにいろんなジャンルを融合したクロスオーバーが増えてきた昨今も、ジープはどちらかというと昔ながらのオフロード臭が強いモデルが多かった。そんななかで、昨年春に日本上陸した新型チェロキーは、なんというか「ついに!」というべき脱皮感が濃厚な新生ジープである。

  
 このチェロキーの基本骨格は、エンジンを横置きするFF乗用車そのもので、基本プロポーションはスポーティな最新乗用SUVのど真ん中。で、フェイスデザインはご覧のように、超アバンギャルド。あの7本のスリット(縦溝)というジープ伝統のグリルデザインを、こんな見事に処理するとは!? 自動車デザイン好きなら、ちょっとツボを突かれるであろう名デザインといっていい。

 ちなみに、最上段にあるまゆ毛のような切れ長ランプはスモールライトとウインカーで、メインのヘッドランプはそのひとつ下にある台形部分に埋め込まれている。まあ、自動車の安全基準をちょっと知っていれば「ランプ類の高さを考えれば、そりゃそうだわ」なのだが、最初に見ると、まさかの驚きに満ちる。

 さて、ジープを含む旧クライスラー社は、2009年からイタリアのフィアットグループの資本を受け入れはじめて、昨年にはフィアットグループと完全一体化して、今は"フィアットクライスラー・オートモビルズ"という世界7位の巨大メーカーとなっている。

 この新型チェロキーは、そんな伊米にわたる壮大な経済ドラマが産み落としたクルマである。じつはチェロキーの基本骨格設計やエンジンは、今や同じ屋根の下にいるアルファロメオ・ジュリエッタ(第27回参照)と共通。まあ、こういうクルマづくりは世界的にはめずらしくもなんともないが、以前のジープ(旧クライスラーには、ちょうどいいベースがなかった)なら、これを作るのはまず不可能だっただろう。

 というわけで、新生チェロキーはジープ社史としては歴史的な作品ではあるが、既存の乗用車をベースにした背高SUV......というのは、ある意味で"ありがち"な成り立ちでもある。では、なぜ『新車のツボ』でわざわざ取り上げるのかといえば、この見事なデザインもさることながら、その走りがとにかく素晴らしいツボに満たされているからだ。

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