【新車のツボ40】
ジープ・ラングラー 試乗レポート
今をときめくSUVの、そもそもの元祖は第二次大戦中に活躍した軍用車ジープである。"ジープ"の名は現在クライスラー傘下のSUV専門ブランドになって、最新鋭SUVを数多くラインナップする。しかし、そのなかに1台、元祖ジープの血統を色濃く受け継ぐモデルが生き残る。"ラングラー"という。
このオレンジのラングラーは"アンリミテッド"といって、長短あるボディのうちのロングのほう。一見すると風変わりな背高ワゴンにしか見えないが、その基本構造は元祖ジープそのままだ。ちょっとした工具があれば屋根もドアもさっぱり取り外せて、そうすれば「世界一開放的なオープンカー」になる。また、タイヤを囲むオーバーフェンダーもボディと別体の樹脂製なので、それも外せばタイヤもむき出し(ただし、タイヤむき出しで一般道を走るのは日本では違法)。
もっとも、写真のように屋根とドアをつけておけば、室内にはエアコンもパワーウインドウもオーディオもナビも備わり、日本仕様は右ハンドルにオートマ......だから、現代のSUVとしての快適性や利便性になんら不足なし。......と書くと「やっぱりカタチだけそれ風のナンチャッテと同じじゃん!」とのツッコミも出そうだが、断じてそうではない。
だいたいドアの開け閉めから、ラングラーはちょっとフツーでない。ヒンジ(=蝶番)が外側にあり、ドアが開きすぎないためのストッパーも簡素なナイロンベルト。窓は電動開閉式だが、内側の内装材もごく薄い。シート位置もハッキリ高く、ちょっとヨジのぼる感覚。ダッシュボードの奥行きはすさまじく短く、ドラポジを合わせると、背筋をピンと伸ばした姿勢に自然とおさまる。
こうしてドアを開けてシートに座るだけで、ラングラーにはマニアのツボをそそるミリタリーな血統感が濃厚にただよう。
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著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/