【新車のツボ94】アバルト595コンペティツィオーネ試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 今回紹介するアバルト595コンペティツィオーネは、以前ここで取り上げたアバルト500C(第3回参照)の進化発展版......というか、別グレードのひとつ。ご承知のかたも多いように、アバルト500/595というのは、イタリアのフィアットが販売する500(第10回参照)の高性能スポーツモデル。ちなみに、アバルトのベースであるフィアット500の国内販売開始は2008年春、アバルトのそれは2009年初頭のこと。フィアットにしてもアバルトにしても、すでに5年以上の長寿モデルということになる。

 そもそもアバルトとは、1949年に設立されたチューニングメーカーであり、黎明期からフィアットベースのマシンで大活躍。1971年にフィアットに吸収されて以降も、フィアット競技部門の母体となって、それ以降のフィアットグループのモータースポーツ活動(とくに有名なのは、ランチアブランドによるラリー、アルファロメオのツーリングカーなど)は実質的に旧アバルトのファクトリーが手がけたものといっても過言ではない。

 ただ、アバルトという名前は本国では90年代くらいから一時的に表向きは使われなくなり、歴史あるアバルトのファクトリーも21世紀の到来を待たずして閉められた。だから、09年にフィアットがいきなり"アバルト"という名を持ち出したときには、裏事情を知るマニアにはちょっとした驚きだった。

 というわけで、今回のアバルト595はその車名から想像されるとおり、500よりさらに高性能なアバルトである。ただ、1.4リッターターボをはじめとした基本ハードウェアは500も595もまったく変わりない。制御プログラムでターボの利き具合(過給圧)をイジッて、エンジン出力アップして、あとはタイヤやアシをちょいと締めただけだ。

 それにしても、約4年半ぶりに取り上げるアバルトは、上記以外に特筆すべき変更や新機軸が追加されていないはずなのに、乗り心地も操縦性も、当時より明らかに良くなった。当時は140馬力でも神経質気味で、「このパワーだとギリギリじゃね!?」といった感じだったが、この最新の595では160馬力をシレッと受け止めて走るのだ。

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著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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