【新車のツボ95】
ルノー・ルーテシア・ゼン0.9L試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ここで4代目ルーテシアを取り上げるのは、ルノースポール(第66回参照)と1.2Lターボ(第76回参照)に続いて3回目。......といって、ルーテシアが大改良されたわけでもなく、今回の0.9Lは、より低パワーで安価な追加グレードでしかない。しかし、これが実際に乗ると大感動。全身ツボまくり。これぞベスト・オブ・ルーテシア!......ということで、性懲りもなく、また取り上げてしまった次第。

 というわけで、このルーテシアは従来からあった中間グレードの"ゼン"と同等の装備内容で、日本初上陸となる0.9Lの3気筒ターボエンジンを積む。もっとも、日本では「追加」でも、フランス本国では0.9Lのほうが先に発売されて、1.2Lのほうが後出し。0.9Lには最初からMTしかなく、日本ではオートマ(=1.2L)登場を待っての発売だった。

 そんな0.9Lは、フランス本国でもっとも売れているルーテシアだという。0.9Lももちろんガソリンエンジン。欧州クルマ事情にちょっと詳しい人なら「今の欧州では乗用車でもディーゼルが常識」というイメージをお持ちだろう。なかでもフランスは昔からディーゼル消費大国で、ここ数年は新車販売の6~7割をディーゼルが占める(!)ほどだった。

 しかし、フランスも所属するEUでは、今年1月以降に発売される新型車から、新排ガス規制"EURO6"が義務づけられた。

 これまで以上に高度な排ガス処理システムが必要となり、ディーゼル車の価格が上がる。その影響はもともとの価格が安いコンパクトカーほど大きいのは自明の理。しかも、欧州ではディーゼル燃料価格も高どまり。ルノーの試算では「今後のコンパクトカーは、年間走行距離が2万km以下ならガソリン車のほうがトータルで低コスト」になりそうだという。それだけではない。フランスではディーゼル車が増えすぎたことで、大気汚染が問題化。首都パリでは『ディーゼル車乗り入れ禁止法案』が取りざたされるほど、事態は進んでしまった。そんなこんなで、ディーゼル大国フランスですら、今や0.9Lのガソリンルーテシアがもっとも売れているんである。

 この0.9Lエンジンはターボをつけることで、従来の1.2~1.3L相当の性能を発揮する。欧州ではベストセラーコンパクトの一角となるルーテシアは日本でいえばホンダ・フィットのような存在だから、これはさしずめ"フランスのフィット1.3L"みたいなもの。本来は、とくにこだわりもなく選ばれる、買い得な実用コンパクトカーでしかない。

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