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【新車のツボ76】
ルノー・ルーテシア試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 約3年前の第8回に、ワタシは最推奨株のコンパクトカーのツボとして、ルノーのルーテシアをご紹介した。フランスのルノーは欧州では超ビッグな老舗ブランドであり、ルーテシアはいわば「フランスのフィット」だ。ヨーロッパ全土で、免許取り立てのニイチャンからごく普通のオバチャンまでが、ルーテシアをさしたる思い入れもなくコキ使い倒している......ってなことを、そのときも書いた。

 第8回で紹介したルーテシアは歴代で3代目にあたる。で、今回紹介するのは、昨年夏に日本発売された4代目にあたる新型ルーテシアだ。この新型でも基本となるボディやシャシーは3代目からの正常進化型といってよく、「これぞ理想の乗用車!」とヒザを叩いた3代目のツボはすべて健在である。

 街中でのルーテシアは意外とコツコツ系のドライな乗り心地なんだが、流れの速い幹線国道、そして高速道路......と、スピードが上がるにしたがって、身のこなしがどんどん有機的にしなやかになっていく。パワステはけっこう軽めで適度に遊びがあり、乗った瞬間にアツくなるタイプではない。だけれど、その反応はあくまで正確で、ブレーキングやアクセルの加減速をからめたメリハリある運転をすると、みるみる血が通って生気を増す。

 つまり、ルーテシアの運転感覚は必要以上に気を使う必要もないが、クルマらしく走らせるほど、カキーンと気持ちよく響く。怠惰な運転でもフツーに走るが、うまく運転するほど、曲りから加速まできれいに動く。そういう乗り手の運転のちがいに対する響きかたが、フツーでない。だから、長く付き合っても運転に飽きないのだ。それにルーテシアは、室内も意外なほど広い。この方面では日本のホンダ・フィットが一頭地ぬいているが、ルーテシアの居住空間はそれに次ぐ余裕がある。これもルーテシアの隠れたツボである。

 ルーテシアのようなクルマこそ、毎日の生活をちょっとだけ楽しくしてくれる実用品=乗用車のカガミだと、ワタシは思っている。

 先代の3代目ルーテシアもまさに理想的な乗用車というべき機械だったのだが、いかんせん、見た目のデザインが薄味なのは否めなかった。また、欧州では今もディーゼルエンジンやMTが主流だから、日本の常識たる「ガソリンエンジンとオートマ」が、ルーテシアでは旧式で魅力に欠けていたことも事実だ。

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