【新車のツボ89】VWゴルフR試乗レポート (2ページ目)
繰り返しになるが、ゴルフRはすさまじく速い。なのに、目の前のカーブに合わせてステアリングを切って、テキトーにアクセルを踏んでいるだけで、つるべ落としのように速いのだ。エンジン音も勇ましくて"いかにも!"の音質だが、本物のチューニングエンジンが絞り出す、むせび泣くような色気......というより、「こんな感じが好きなんでしょ!?」みたいに、隠れたスピーカーから鳴っているような演出感たっぷりの音質だ。
とどのつまり、これはゴルフのカッコをしたスーパーカーである。そしてコンフォートモードでは、今度はゴルフのカタチをしたハイテク・ラグジュアリーサルーンである。
まあ、高性能タイヤと硬いサスペンションに、高出力エンジンを積めば、どんなクルマだって、ある程度は速くはなる。ただ、こんだけ簡単に速く、家族から文句の出ない乗り心地で、変幻自在に性格を変えながらも、それが1台のまともなクルマになってしまうゴルフって、どんだけフトコロが広いんだ!?
ワタシ個人は少しばかり残ったクルマの弱点を、自分の手で補完しながら走ってこそ、"人車一体感"が得られると信じて疑わないクチである。なんでもソツなくこなす優等生タイプには、あまりシンパシーを感じないヘソ曲がり人間であることは否定しない。
このゴルフRもまた、ゴルフのクセに(失礼!)ときには高級セダンのように快適で、本気を出せば高性能スポーツカーばりに速い。しかも、細部まで作りがていねいで、自動ブレーキや車間距離維持クルーズコントロールなどの今どきのハイテク装備もあらかたついていて......の優等生タイプの典型だ。
ただ、ゴルフRの場合、その"こなす"のレベルが"ソツなく"なんて甘っちょろいものではなく、快適性は700~800万円級のラグジュアリーサルーンのごとく、そして速さは1000万円超級のスーパーカーなみ......という空前の次元にイッちゃってるのだ。ゴルフRに"あばたもエクボ"的な弱点は皆無。はっきりいうと、ワタシはこのクルマに愛嬌をまったく感じない(また失礼!)。
しかし、このスーパーエリート優等生ぶりを見せつけられると、「ツボが......ツボが......」などと重箱のスミをつついては喜んでいる自分という人間の小ささを痛感させられて、精神的にへこむ。で、それでもゴルフRに乗っているうちに、今度は、その敗北感がやけに気持ちよくなってくる......。
【スペック】
VWゴルフR
全長×全幅×全高:4275×1800×1465mm
ホイールベース:2635mm
車両重量:1500kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1984cc
最高出力:280ps/5100-6500rpm
最大トルク:380Nm/1800-5100rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:14.4km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:529.8万円
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