【新車のツボ64】VWゴルフ 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 新しいゴルフは乗り心地も高級。6は路面グリップをしっかり伝えて、前後左右にもけっこう軽快にボディが動いたが、ゴルフ7は上屋がピタリと動かず、路面を滑るように走る。だれもがいいクルマだな、高級なクルマだな......と直感的に感じるこの味つけは見事というほかない。

 新型ゴルフ7は先代の6よりボディが大きくなったが、重量は軽くなっている(!)。なのに乗り心地は逆に重厚になった。今という時代感も抜かりなく、軽量化とともに燃費はさらに大幅向上。低速自動ブレーキなど、最近話題の"ぶつからない"技術にもぬかりなし。こんなに高級で、かつ今という時代感もたっぷりのクルマが、ゴルフ6より割安感がある270~300万円......というのだから、いかに心情的には"手足のように操れるゴルフ6"にシンパシーを抱いているワタシでも、さすがにツボをグリグリと刺激されるのを否定しない。

 ゴルフ7の開発コンセプトに"プレミアムの民主化"というものがあったという。メーカーがいうこの種のお題目は「だから?」と冷めたツッコミを入れたくなるケースも多いのだが、ゴルフ7を見せつけられると、開発陣はその開発コンセプトに大真面目に取り組んだんだなあ......と素直に感心せざるをえない。

 この内容と味わいで200万円台後半なのだから、これはたしかに"民主的なプレミアム高級車"である。装備内容を揃えると、この価格は国産車でいうとトヨタ・プリウスと大差なし。

 まあ、プリウスのハイブリッド技術もたいしたものだが、ゴルフ7とプリウスの質感や乗り心地を客観的に比較してしまうと「人間が幸せな気持ちになるイイモノをつくりたい」という気持ちはゴルフ7のほうがはるかに強い感じ。こういうクルマ好きのツボのそそり指数は、ハッキリいって、ゴルフ7の圧勝。まあ、燃費はプリウスのほうが優秀だが、それでも実燃費の違いはせいぜい1~2割程度で、高速燃費はゴルフ7のほうが有利だし。

 最新のゴルフを見ていると、最近の日本車の大半が「ユーザーの興味はしょせん燃費と価格、細かい使い勝手だけ」と勝手に見切って諦めているようにしか見えない。わが日本の技術者の皆さんには、ぜひともゴルフ7に冷や汗が流れるツボをたっぷり突っつかれて、ゴルフをギャフンといわせる日本車をつくってほしいものである。

【スペック】
VWゴルフTSIコンフォートライン・ブルーモーションテクノロジー
全長×全幅×全高:4265×1800×1460mm
ホイールベース:2635mm
車両重量:1240kg
エンジン:直列4筒DOHCターボ・1197cc
最高出力:105ps/4500-5500rpm
最大トルク:175Nm/1400-4000rpm
変速機:7AT
JC08モード燃費:21.0km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:269万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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