【新車のツボ52】フォード・フォーカス 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 本連載の第47回でもワタシはゴルフの走りをベタボメしているが、そうであれば、このフォーカスの走りも同じくベタボメ、あるいはそれ以上のベタベタボメしなければならない。もっとも、両車の味わいはちょっと異なる。ゴルフが「フワッ、フワッ、フワッ」と適度な柔らかさと心地よい微上下動を伴って走るのに対して、フォーカスは同じカーブでも「ビッターーーッ!」と路面にへばりついて、上下動は明らかに小さい。

 カーブの手前でアクセル緩めてブレーキ踏んで、ステアリングを切りはじめると同時にクルマ全体が回頭して、そこからカーブを曲がりきるかきらないかのうちにステアリングを戻しながらアクセル踏んで再加速......という一連の作業を"コーナリング"と呼ぶ。

 そのコーナリングを、フォーカスほど一糸乱れぬ美しいアーチを描くようにこなすクルマはそうはない。ねらったラインをピタリと走るフォーカスと較べると、あのゴルフですら「ホンのちょっとブレやすいかな」と感じてしまうのだから、フォーカスの基本フィジカル能力はすごい。これ見よがしに鋭くて速いのではなくて、ジワジワと身体に沁みるようなステキな操縦性である。

 また、ゴルフのエンジンは今をときめくハイテクの小排気量ダウンサイジングターボだが、フォーカスのそれは2.0リッター。排気量はごく普通でターボもつかず、新しモノ好き、ハイテク好きにはちょっと物足りないかもしれない。ただ、シンプルなエンジンだからクセもなく、エンジンの存在感が前に出すぎることもない。どんな速度からでも素直に加速して、パワーの出方も自然だ。

 ヒイキなしの厳しい目で見れば、話題のハイテクやエコ性能などで「エンジンはゴルフの判定勝ち!」と言えなくもない。しかし、フォーカスに限っては「このエンジンは、コーナリングを邪魔しないための縁の下の力持ち......そうに決まってる!」と、ワタシのようなクルマオタクは、フォーカスの"ハンドリング、操縦性、コーナリング"というツボだけでもはや昇天間近。だから、ほかのことはすべて勝手に納得してしまう。

【スペック】
フォード・フォーカス・スポーツ
全長×全幅×全高:4370×1810×1480mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1380kg
エンジン:直列4 気筒DOHC・1998cc
最高出力:170ps/6600rpm
最大トルク:202Nm/4450rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:12.0km/L
乗車定員:5 名
車両本体価格:293万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る