【新車のツボ49】ホンダN-ONEプレミアム・ツアラー 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 最近、クルマに詳しいオヤジたちが珍しく、日本の軽自動車に色めきだっている。ホンダの新しい軽自動車、N-ONEだ。N-ONEを形式的に説明すれば、今いちばん人気の軽であるN-BOXに続く"Nシリーズ"最新作であり、ジャンル的にはワゴンRやムーヴと競合するミドルハイトワゴン......となる。

 アラフォー世代以上ならお気づきのように、N-ONEのデザインは、1960年代に発売された"ホンダN360"がモチーフ。早い話が、輸入車のミニやフィアット500に通じる"セルフカバーデザイン"というか、ちょいレトロなキャラが売り。機械的な特徴としては、軽ミドルハイトワゴンのなかでは、N-ONEは背丈がちょっと低くて、後席の足もとの余裕がちょっと少なく、そして値段がちょっと高い。

 N-ONEがクルマ好きのツボを突くのはこういうところである。すなわち、N-ONEは軽でありながら「デザイン優先で、しかもそのデザインに語るべきウンチクがあり、室内の広さ一辺倒のパッケージでなく、しかもちょっとだけ贅沢」だからツボなのだ。

 N-ONEもライバルにならって標準と上級の2シリーズ構成だが、上級シリーズ名が定番の"カスタム"ではなく"プレミアム"なのも面白い。従来のカスタムはスポーティ仕立てが一般的だが、N-ONEプレミアムは、その名のとおり"高級"ねらい。そのネーミングはダテではない。ボディに専用の遮音・吸音対策を施して静粛性を向上させ、インテリアには木目調パネルや布張りドアパネルなどコストがかかる仕立てを施す。N-ONEのいうプレミアムは大マジなのだ。

 前記のように、N-ONEがライバル比で微妙に全高が低く、後席が同じ土台を使うN-BOXほどダダッ広くないのは、なによりデザインのためという。これより背を高くすると絶妙なデザインバランスが崩壊するし、後席をこれ以上広くする(=シートを後ろに下げる)と、ほどよく傾斜したリアウインドウが立ちすぎてしまうのだ。

 その結果、N-ONEの空間設計はすべてが"ちょうどいい"ものになった。後席がライバルほど広くないといっても、180cmオトコがリラックスして座っても、さらにプラスアルファの余裕はある。最近の軽はおしなべてスペース過多なのだ。また、後席を後ろに下げすぎていないおかげで、シートを倒したりスライドさせたりしなくても、トランクは中型の旅行バッグをポンと放り込める使い勝手のいい空間となっている。

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