【新車のツボ49】
ホンダN-ONEプレミアム・ツアラー 試乗レポート (2ページ目)
N-ONEはこのように、中身とデザインが「これ以外ありえない!」といえるギリギリのバランスで見事に調和しているのだ。
走りや性能面でN-ONEが飛びぬけて優秀なわけではない。スズキやダイハツほど複雑なアイドルストップ機構などの燃費ハイテクを使っていないので、カタログ燃費もそこそこ......といったところだ。しかし、絶対的にはN-ONEの走りになんの不満もなく、軽初体験の人にカルチャーショックを与えるくらいにはステキである。カタログ燃費がライバルに届かずとも、基本設計が骨太だから、クルマらしくガンガン走るほど燃費がよくなるのがまた、好き者のツボを突く。
さらに、UVカットガラスやドアミラーウインカー、クルーズコントロール、本革ステアリングにパドルシフトなど、ちょい贅沢装備をまとめた"Lパッケージ"を10万円前後のオプション価格で用意するのも、N-ONEで注目すべき点だ。ただ、Lパッケージの本当のキモは、そこにサイド&カーテンエアバッグが含まれるところにある。
誤解を恐れずにいえば、この種の安全装備は「事故ってみないとありがたみが分からない」類のもの。単独オプションではどうしても選ばれにくく、だから価格もいつまでも下げられず、結果的に普及が進まない。しかし、N-ONEでは思わずフンパツしたくなる装備パッケージにあえてサイド&カーテンエアバッグを抱き合わせて、この効果絶大の安全装備をコストダウンしながらより多くの人に買ってもらう作戦に出た。これはじつに巧妙かつ画期的、そして良心的なアイデアだ。
なんにしても、これまでの軽自動車が「広さも機能も買い得感も白ナンバーに負けない」を最大のよりどころにしていたとすれば、N-ONEはデザインに質感、ウンチク、技術者の良心、すべてが絶妙バランスのパッケージ......など「このクルマだからほしい」と思わせるツボが満載なところが、決定的に新しい。
【スペック】
ホンダN-ONEプレミアム・ツアラー Lパッケージ(2トーンカラースタイル)
全長×全幅×全高:3395×1475×1610mm
ホイールベース:2520mm
車両重量:870kg
エンジン:直列3 気筒DOHCターボ・658cc
最高出力:64ps/6000rpm
最大トルク:104Nm/2600rpm
変速機:CVT
JC08モード燃費:21.4km/L
乗車定員:4名
車両本体価格:158 万7750円
著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/
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