【新車のツボ37】
BMW320i 試乗レポート (2ページ目)
BMWは昔から"前後重量配分50:50"をクルマづくりの絶対不可侵のツボとして奉ってきた。それは「前後バランスよくヒラヒラ軽快な曲がり性能こそBMW」の理論であり、この新型3シリーズでもそのツボは健在だ。
ただ、その"50:50"の良さをワタシのような下手の横好きアマチュアも安心してかつ濃厚に味わわせるには、じつはそれ以外の部分のサジ加減が重要だ。ステアリングやリアタイヤがあまりに安定志向だと、50:50が本領発揮するスピードに達する前に「かったるい」と萎えさせてしまうし、低いスピードから50:50を演出しようとしすぎると、今度は「フラフラして怖い」となってしまう。
具体的にいうと、先々代3シリーズはベンツを意識して「かったるい」が強すぎたきらいがあり、いっぽうで先代はその反動で「フラフラ」が前面に出すぎていた。
しかし、新型3シリーズはついにドンピシャの塩梅(あんばい)を見つけた感がある。交差点のような低速でもカキンと軽快に反応するいっぽうで、まっすぐ走るときにはそれなりにしっとり落ち着いて過敏ではなく、先代にあった荒れた路面で跳ねまくるクセも払拭された。で、山道にもっていって"いっちょやったるか!"となると、いよいよ"50:50"の本領発揮。運転している自分を軸にしてスルーッと曲がっていくのは、好き者にはたまらない一体感。
とくに今回の320iラグジュアリーのように、低パワーエンジンで高性能すぎタイヤを履く仕様で、あえてスピンを防ぐ安全装置の"DSC"をカットして走ると、アマチュアが怖くないスピードでもグイグイ振り回せて楽しい。性能が低い仕様のほうが楽しい......ということは、基本的な素性がよくできている証拠であり、こういうクルマこそツボにくる好事家(こうずか)は多いはずである。
【スペック】
BMW 320i ラグジュアリー
全長×全幅×全高:4625×1800×1440mm
ホイールベース:2810mm
車両重量:1540kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1997c
最高出力:184ps/5000rpm
最大トルク:270Nm/1250-4500rpm
変速機:8AT
JC08モード燃費:16.4km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:470万円
著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/
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