宮司愛海&中村光宏が語る世界フィギュア。
北京五輪に向けた闘いが始まる (3ページ目)
宮司 私はこの四大陸選手権で、やっと一歩進めた感じがしているんです。これまでずっと足踏みしていて、楽しむことよりも先に、「頑張らなきゃ」「ミスしないように」が先に来ていて。そこをようやく乗り越えられた気がしていて。
中村 吹っ切るには、数をこなして経験を積むしかないからね。僕は試合会場でたくさんの演技を見たし、映像でも繰り返し何度も見たよ。取材して試合を見る。これを繰り返していると、どんどん好きになるから言葉が出るようになる。
宮司 私のリポーターという仕事で言えば、選手の歩んできたストーリーを知ることで、言葉に思いが乗るようになりました。そのやり甲斐を強く感じられるようになってきましたね。これってフィギュアスケートに限らず、どのスポーツにも通じるところですよね。目で確かめて、耳で聞いて、感じ取る。
中村 そう。僕たちの感性が試されているよね。大事な部分だよ。
宮司 四大陸選手権の男子の話もしましょうよ。女子の実況を担当されているミツさんが、男子をどう見ていたのか教えて下さい。
中村 やっぱり優勝した羽生結弦選手だよね。
宮司 大会直前でのプログラム変更。ビックリしました。
中村 変更っていうだけでも驚いたし、変更後のプログラムが『バラード第1番』と『SEIMEI』。
宮司 2016年の平昌五輪で五輪2連覇を達成したときの伝説のプログラムですからね。
中村 四大陸選手権のショートプログラム『バラード第1番』を生で見て、久しぶりに『特別』っていう言葉が頭に浮かんだよ。フリープログラムの『SEIMEI』は、『S-PARK』の生放送対応があったから日本に帰っていたので、生で見られなかったのが残念で仕方ないよ。
宮司 素晴らしい演技でしたよ。
中村 去年12月の全日本選手権で宇野昌磨選手に負けて、その直後のフジテレビのインタビューでは羽生選手の表情が疲れ切っていて。コメントにも苦悩が表れていたんだよね。そうしたら、プログラムを『SEIMEI』に変えた。きっと羽生選手も『変更した』ではなく、『戻した』と思われる可能性を理解していたと思う。だけど、あの四大陸選手権の演技で、そういう考えを一切合切吹き飛ばす演技をしてくれた。まさに、オンリーワン。スペシャル。震えたよ。
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