宮司愛海&西岡孝洋が語る全日本
フィギュア「時代の転換期になる?」 (3ページ目)
宮司 宮原知子選手は表現力というところに勝負をかけているでしょうね。
西岡 そう。じゃあ、坂本花織選手は何が彼女にとって大事にしている武器なのか、樋口選手は(日本の)代表に戻るために何のジャンプを入れるのか。女子は選手それぞれのフィギュアスケートへの考え方が鮮明に浮かび上がる大会に今回はなるんだと思う。
宮司 4回転に挑戦する選手も出てきてほしいですね。
西岡 そうだね。取材したなかで印象的だったのが、ある男子選手は4回転ジャンプを難しいものにしていたのは、自分たちだって言うんだよね。「4回転ルッツなんて絶対に無理」と思い込んでいて、誰もやろうとしなかった。だけど、ひとりが成功したことで、自分たちも挑戦してみたらできちゃった。
いま女子選手でロシア勢だけが4回転を跳ぶのは、彼女たちは跳べて当たり前という感覚があるからなんだろね。それを外側から見ている日本選手たちは、大きな壁を感じていて、4回転は男子しか跳べないという思い込みがある。その壁を誰が壊すのか。
宮司 日本の女子選手たちは分岐点にいますよね。
西岡 もっと言えば、海外の選手も含め女子は競技としての分岐点を迎えていると思う。今は4回転を跳ぶのは16歳くらいの選手たち。だけど、女子選手は体型の変化があるから、どうしても18歳くらいからはジャンプで苦労する。
宮司 女性として成長していくうえで、どうしても体型は変化しますからね。
西岡 もし20歳くらいになっても女子選手が4回転をガンガン跳ぶ時代が来るなら、女子フィギュアは新たな時代に突入していくのだろうなって思う。
宮司 女子に比べれば、男子はすでに分岐点を過ぎて新たな時代になってきましたよね。
西岡 そうだね。男子はネイサン・チェン選手が登場したことで、羽生選手の意識がシフトアップして、どんどん変わっている。この先がどうなるか見えない部分があるくらい。
宮司 なるほど。そういった視点は、勉強になります。
西岡 いやいや(笑)。
宮司 そういう視点を教えてもらうと、今年の全日本フィギュアスケートが例年以上に魅力的で見逃せない気持ちになりますし、私もそのすごさを中継の随所で伝えていきたいと思います。
西岡 シングルに出場する男子30選手、女子30選手には目標に向けてやってきたドラマがある。この舞台にかける彼らのすごさみたいなものを、我々が言葉で伝える。そこがこの大会の一番の醍醐味だと思う。いまのシステムだと僕は上位選手だけを担当しているけれど、本当は順位に関係なく担当したい選手が数多くいるんだよね。
宮司 それは取材を通じて選手一人ひとりの歩みや思いを知っているからこそですね。
西岡 そういう気持ちにさせてくれるものが、フィギュアスケートにはあるんだよね。
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