全日本大学駅伝直前。駒澤大の4連覇を阻むのはどこか? (2ページ目)
photo by Yamamoto Raita その好成績の要因のひとつが、酒井監督の非常に勉強熱心な姿勢にあると思います。陸上競技の他種目のコーチに話を聞くだけでなく、平井伯昌(のりまさ)コーチが指導する同じ東洋大の水泳部の練習を見学してアドバイスをもらうこともあるそうです。さらには、心理学も勉強しているといいます。
選手にかける言葉も、それぞれの選手の性格を考慮に入れて「この状況で何を伝えることが、この選手にとって一番いいのか」ということを熟考し、長い言葉では選手の頭の中に入りにくいので短いフレーズで簡潔に伝えているそうです。同時に、その選手のモチベーションを上げることも考えているというのです。
先日、練習取材にうかがったとき酒井監督は、今年の戦力に関して「設楽兄弟(卒業した設楽啓太、設楽悠太の双子兄弟)が抜けた穴は大きい」と話していましたが、それでも「去年のように大エースはいないが、うちには主力級が揃っているのが強み。優勝を狙える可能性はある」と、勝負にこだわる姿勢を見せてくれました。
なかでも、酒井監督が中心と考えているのが、今年2月の熊日30kmロードで1時間28分52秒の日本学生最高記録を出した3年の服部勇馬選手です。
酒井監督が期待をかける東洋大の服部勇馬選手 photo by Nagata Yohei/AFLO SPORT 2年前の全日本大学駅伝、最長区間のアンカーに起用されトップを走っていた服部選手が、駒大の窪田忍選手に抜かれた瞬間を今でも鮮明に覚えています。酒井監督に2年前のレースについて話を聞いたところ、あの時は他大学の監督からも「なぜ服部をアンカーにしたんだ」とレース後に質問されたそうです。それでも、将来有望な1年生に経験を積ませたいと考えての起用であり、成長した今の服部選手の走りを見て、「今では、あそこでアンカーを任せて良かったと思える」と語ってくれました。
服部選手にも2年前のことをお聞きしましたが、「あの時は、レース後1週間くらい本当に落ち込んだ」といいます。それでも今では、「何か苦しいことやつらいことがある度に、あの時の悔しさを思い出して頑張れる。いい経験だった」と振り返ってくれました。
服部選手は、1年の箱根駅伝では復路の重要区間の9区を走り、前回の箱根ではエース区間の2区を走っています。酒井監督としては、勝負を決める区間で起用することで、エースとして東洋大を背負うだけではなく、将来日本を代表する選手になってほしいということを服部選手に伝えたかったのだと思います。
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