目指すは金メダル。
対照的なふたりの天才、長島圭一郎と加藤条治 (2ページ目)
今シーズン、リラックスすることを心がけていた加藤選手は、昨年12月の五輪代表選考会(全日本選手権)を仮想ソチ五輪ととらえ、プレッシャーや緊張感をどうほぐせばいいのかをいろいろ考えたといいます。レース直前には自分の指輪を見つめてみる、チームメイトと笑顔で話すなど、さまざまなやり方で緊張をほぐしている加藤選手の姿がありました。すると結果は、2本とも34秒台の好タイムで優勝。真面目な加藤選手が、ひとつひとつ綿密に準備をした結果が勝利につながる瞬間を見た思いでした。
photo by Yamamoto Raita 加藤選手のとび跳ねるように滑るコーナリングは、「世界一」とも言われています。そのコーナリング技術を支えているのは、発達した足の筋肉。ふくらはぎの「ヒラメ筋」を見せてもらいましたが、普通の人であれば筋肉があまりないところがボコッと膨らんでいるのです。加藤選手は「小さい頃に山の中で遊び回っていたから、自然とここの筋肉が発達して、そのおかげで、スケートリンクで氷を感じることができるのではないか」と笑いながら話していました。
そして、私がもうひとつ驚いたのは加藤選手のスケート靴。普通、スピードスケートの選手は、自分の足にピッタリ合う靴を選ぶのですが、加藤選手は自分の足のサイズより少し大きめのものを履いているのです。
その理由は、子どものころに履いていたお兄さんのお下がりのスケート靴がブカブカで、「そのまま滑り続けてそれに慣れてしまったから」だといいます。「今もあえてブカブカの靴にしている」と話していましたが、ブレードの設定も含めて、そうした繊細な感覚が、加藤選手の世界一のコーナリングを支えているのです。
一方、長島選手の練習取材に行った時、長島選手はチームの他の選手の後について滑るトレーニングに取り組んでいました。練習後、「今日の練習の目的は何だったのですか?」と聞くと、「別に何の練習でもないです。後ろをついていくのは楽だから」と笑いながら答えていた長島選手でしたが、ほかの選手に聞いたところ、風圧がかからないようにほかの選手の後方で滑りながら、自分の足の細かな感覚を確かめていたようでした。
2 / 4