久保建英のゴールほかを詳細分析。元日本代表・石川直宏が指摘する、ゴール前の駆け引きとボールタッチ (2ページ目)
ゴール前では相手との駆け引きに勝つ
あの状況では、僕であればもっと早いタイミングで体を開き、ファーに打つとGKに見せておいて、ニアに蹴ったり、股を抜いたりというのを狙うと思います。結果的に久保も股を抜くシュートを選択していますが、彼はそれをギリギリまでGKに見せませんでした。
たとえばシュートコースが右、左、真ん中と3つあるとします。先に角度をつけるなどアクションを起こすと、そのシュートコースの選択肢はいずれかに偏るものです。でもギリギリまで見せないことで、相手GKはコースを絞れなくなります。
その駆け引きがあったなかで、シュートを打つギリギリのところで最後に少し体を開きながら、正面に打って股を抜いていきました。
試合終了間際で、これを決めたらアトレティコに勝てるというシチュエーションで、しかも相手は世界でもトップ・オブ・トップのGKオブラク。そんな状況でも自分で主導権を握りながら駆け引きをして決めきった、本当に見事なシーンでした。
決められたあとにオブラクが地面を何度も叩いて悔しそうにする姿に、久保がどれだけ相手を上回って決めたのかが表れていたと思います。
シュート前のボールタッチが大切
今回動画で紹介している足ワザのなかで、レロイ・サネの「インアウトコントロール」はフィニッシュの前のボールタッチから非常によいイメージのプレーでした。僕も現役時代に何度か同じような形でシュートを打つことがありました。
流れとしては、最初のタッチでDFを手前に釣り出しながらボールを足元に止め、2タッチ目で左に運んですぐにシュートを打つ。サネの得意なリズムが出たフィニッシュだと思います。
ゴールではフィニッシュがクローズアップされがちですが、その前のボールタッチもとても大事です。最初のタッチで確実に次のプレーがしやすい場所に置き、またタッチの時点で次のプレーというのがイメージできていたと思います。
シュートの前のボールタッチがとても大切この記事に関連する写真を見る それもふまえたファーストタッチが正確だからこそ、サネの得意な形に持っていけています。手前に釣りだして逆を取る流れも大事ですが、ボールタッチのところにも注目してマネして見てください。
ボールタッチで言えば、ディオゴ・ジョタの「軸裏トラップ」も非常に対応力のある見事なタッチだったと思います。
フィニッシュの場面でちょっとしたパスのズレというのはよくあるものですが、そこでは対応力が求められます。この時のジョタは、自分がほしいところよりも手前にパスがズレていました。
ジョタはそれを左足の軸裏を通して縦にボールを運び、パスのズレをDFの逆を取るフェイントに生かしていました。ズレたパスをただ止めるだけではなく、それをうまく利用したジョタの対応力はさすがでした。
こうしたフィニッシュ前のタッチや駆け引きにも、ぜひ注目して見てもらいたいと思います。
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石川直宏
いしかわ・なおひろ/1981年5月12日生まれ、神奈川県横須賀市出身。2000年に横浜F・マリノスユースからトップチームに昇格。02年にFC東京へ移籍。09年には自身初となるJリーグベストイレブンに選出。スピードとキレのあるドリブルから数多くのゴールシーンを演出した。日本代表は01年にU-20代表として、ワールドユースアルゼンチン大会に出場。04年はU-23代表としてアテネ五輪に出場。日本代表国際Aマッチ6試合出場。17年に現役を引退。J1通算289試合出場/49得点。引退後はFC東京クラブコミュニケーターに就任、テレビ解説者などでも活躍中。
◆【画像】2021-22シーズン中間地点 欧州トップ10クラブフォーメーション
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