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今季、心機一転を図る
ゴルファー有村智恵の「現在・過去・未来」 (3ページ目)

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro


 その私がゴルフで生きようと覚悟を決めたのが東北高校のときでした。熊本の親元から離れて宮城の仙台で高校生活をし、初めて裕福ではないなかで家族がやりくりし、私のゴルフにお金をかけてくれていることに気づいたからでした。プロゴルファーになる! しかも、単にプロライセンスを取るのではなく、早く稼げるプロになって家族に恩返しすると誓って、自分の意志でゴルフと真正面から向き合いました。それをできるだけの環境が高校にはあって、刺激をもらえる先輩、同級生、後輩がいたことも、私にとってすごくプラスでした。

 高校卒業後の2006年7月にプロテストにトップ合格したことや、2008年にプロ3年目で国内ツアー初優勝したことで、まわりからはトントン拍子にプロ生活を歩んできたように見られますが、私は全然そう思えないんです。プロ転向からずっと「優勝したい」と足掻いて、悩んで、迷って......、それでようやく3年目で優勝を手にできた。だから、私にとって初優勝までの時間はとても長かったですね。

 私は初優勝するまで、勝つためには"特別な何か"が必要だと思っていて、先輩やコーチ、キャディをはじめ、多くの方にアドバイスを求めていました。でも、初優勝してわかったのは、優勝するには特別な何かではなく、小さくて地味なことをコツコツと積み重ねる以外に道はないということでした。コップに少しずつ水を溜めるように地道に練習を繰り返し、その水がコップ一杯になって溢れて初めて優勝できるのだなって知りました。

 プロ7年目のシーズンが終わった25歳のとき、私のゴルフ人生のなかで初めて自分の意志で決断をしました。それがアメリカツアーへの挑戦。最も大きかった理由は、ゴルフを始めた頃から常に選択肢がひとつしかなかった私に、初めて複数の道が現れたからでした。

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