「三刀流」のアクション女優・宮原華音が振り返るプロのリング 相手の膝蹴りに「このままだとやられる。行かなきゃ」 (4ページ目)

  • キンマサタカ●取材・文 text by Kin Masataka

「トレーニング中に、『カウンターがうまい』と褒められていたんです」

 試合前もハイキックが注目されていたが、試合ではあまり出すつもりはなかった。空手の師範からは蹴りよりも突きを重点的に叩き込まれたこともあり、宮原自身もパンチに自信を持っていたのだ。そして、カウンターという強みもあった。インファイトに持ち込めば勝機はあると思っていた。

 試合の終焉はあっけなく訪れた。ガードが下がった宮原に対して、相手選手が右ストレートを叩き込もうとした瞬間、宮原の右が相手のアゴをとらえた。一瞬ふらついた相手に立て続けに二発を叩き込み、試合開始わずか39秒でマットに沈めたのだ。

 その時の手応えを聞くと、「必死すぎて覚えてないです」と笑うが、映像で見ると、倒れた相手を鬼気迫る表情で睨みつける宮原の姿があった。

「倒した実感がなかったんです。相手が今にも起き上がってきそうで、そんな顔になったんだと思います」

【練習が一番つらくあるべき】

「練習が一番つらかったし、怖かったです」

 厳しい練習を通じて感じたのは、「試合ではやってきたことしか出せない」という当たり前のことだった。それは空手を通じて彼女が学んできたことでもある。

 練習では、体格で上回る男性相手にスパーリングを行なうことに恐怖があった。体重が10kgほど違うチャンピオンクラスの選手たちに、パンチが効いてるようには思えなかった。どれだけ押してもびくともしなかったが、あえて過酷な環境に身を置いたおかげで、当日は「彼らより絶対強くない」と言い聞かせることで恐怖を克服できた。

 見事な勝利のあとにやってきたのは安心感だった。

「プロの選手をはじめ、いろんな人が自分の時間を割いて協力してくれたので、勝利を届けられてほっとしたんです」

 試合後、ラウンドガールとして再びリングに上がって大きな喝采を浴びた宮原には、応援に来てくれた仲間たちに手を振る余裕もあった。その時、心から勝った喜びを噛み締めたのかもしれない。

 試合に出たことで格闘家として注目を浴びたが、今後の活動の重心をどこに置くのか尋ねると、彼女は間髪入れずにこう答えた。

「アクション女優です。自分にしかできないことを表現できるのはここしかないと思うから。賞も獲りたいけど、いつかSASUKEをクリアしたいですね。だってカッコいいじゃないですか(笑)」

 そんな夢も語った宮原は、「私をきっかけにアクション、格闘技に興味を持ってくれる人が増えたらうれしいです」と笑った。

【プロフィール】
宮原華音(みやはら・かのん)

1996年4月8日生まれ、東京都出身。三愛水着イメージガールに中学生として選出されデビュー。空手の全国大会で優勝した高い運動能力を生かし、映画『ハイキック・エンジェル』で主役を務めるなど、女優として活躍。立ち技打撃格闘興行『RISE』のラウンドガールを務め、選手としてもリングに立った。現在、『仮面ライダーアマゾンズ』以来の仮面ライダーシリーズ出演となった、『仮面ライダーガッチャード』に「冥黒の三姉妹」の次女・クロトーとして出演中。公式X>> 公式Instagram>>

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る